[コメント] テス(1979/英=仏)
匂いのする映像。
「雨が降りそうな匂いがするね」と言って、分かってくれた人はあまりいないけれど、私は雨が降る前の匂いが好きだ。
世の中にはタバコや香水などの不快な匂いだけじゃなく、雨の匂い、土の匂い、霧の匂い、水の匂いなど人工的じゃない匂いもあって、生活のなかでふとそういう匂いに気づくと得した気分になる。
それ以外にも、「どんな匂い?」と聞かれたら返答に困る「匂いみたいなもの」がある。
朝の匂いみたいなもの。光の匂いみたいなもの。夕暮れの匂いみたいなもの。
「はぁ? 夕暮れに匂いなんかあるかよ」という人とは出来ればお近づきになりたくない。(向こうもこんな怪しいこと言う人間はお断りだろうが)
匂いと記憶は深い関係があるらしく、その匂いを嗅ぐと、その時の自分の状況が手に取るように思い出される。
「テス」を見た時のこともよく覚えている。自分の知らない匂いが今にも漂ってきそうな映像。行ったことのない場所なのに、匂いがしたように錯覚した場面。
はっきり言って話の内容は暗い。好きな映画でもない。
でも、空がどんよりしていて何となく重苦しい日、かすかに湿った匂いみたいなものがすると、この映画の映像がランダムに出てくる。私には湿ったイメージの映画なのだ。そんな時、すごい映画だなあ、と素直に思ってしまう。
ちなみに私は匂いフェチではないです。
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