コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 阿修羅のごとく(2003/日)

森田芳光向田邦子を?」という思いは要らぬ心配だった。おそらく「毎朝新聞」(もちろん架空)の映画欄でも賞賛されたであろう秀作。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







森田芳光にしてはと言っては失礼だが、非常にオーソドックスな演出で(調度品にもこだわりが感じられた)、原作への敬愛の思いが感じられたのは嬉しかった。そうでありながらも、食べ物を噛む音などに彼独特の演出が施されているところは、従来からのファンとしても嬉しさ倍増である。

何気なく交わされる言葉の一言ひとことや、仕草の一つひとつがが心に染みて泣けてきた。かなり早い段階(父の浮気相手の子が父の子ではないことを知った三女が「私達4人姉妹だったんだ」と安心するところや、最初ボクサーが倒されたとき救護室の前で父が財布から自分に必要な札だけを抜き取り財布そのものは四女に渡すところあたり)から涙腺が緩んでいたので、恥ずかしながら終わり頃にはシャツの袖がドボドボになっていた。

クライマックスにあたる母をめぐるエピソードも予想できた展開とはいえ、かなり効いていた。しかしそれらのシーンに関しては、台詞というよりも、八千草薫の哀しみを帯びた微笑に代表されるような役者陣の演技があってのあの展開であるところが私には嬉しかった。

演技といえば、役者陣は男女優ともに皆が素晴らしかったと思う。全ての人が印象に残っているが、特に大竹しのぶ桃井かおりのかけあいは全体の中でもかなり密度の濃いシーンとなっていて見所だし、中村獅童深津絵里のコンビも私にはギリギリの一歩手前というところで楽しめた。

とにかくこのドラマ、昭和50年代の家族を描きながらもそれが今見ても決して古びたものではないところが素晴らしい。今さらながらではあるが、向田邦子という人のすごさと、今の日本に彼女がいないということの大きさを改めて思い知らされた。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (8 人)chokobo[*] ゑぎ[*] 水那岐[*] ナッシュ13[*] sawa:38[*] ゆーこ and One thing[*] セント[*] わわ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。