[コメント] ソドムの市(1975/仏=伊)
過剰な残酷描写を除けば、これは我々が生きている非情な世界の現実そのもの。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画を理解するためには、登場人物の誰にも感情移入するべきではない。ただ画面の中で起こっている現実を直視し、認識することだけが大事だ。
この作品にメッセージ性があるとするなら、それはラストシーンに他ならないと思う。惨殺されていく奴隷たち、それを見ながら興奮してオナニーを始めるファシスト。しかし、それらとは全く無関係だと言わんばかりに、エンニオ・モリコーネの優雅なテーマ曲に合わせて踊る若者二人のシーンで映画は終わるのだ。あまりにも唐突なラスト。
つまり、世の中には「やる側の人間」と「やられる側の人間」が両極端として存在するが、その両方ともある程度距離を置いた場所で平和に暮らしている人間もいる。それらの人間が、お互いに全く理解し合うこともなく、それでも同じ世界で生きなければならないという冷酷な現実。そんな現実を、「ソドムの市」は極めて真正面から、的確に描写していると思う。
追記:黒人のメイドとのセックスをファシスト達に目撃された青年が、凛とした表情で拳を高く突き上げるシーンにも何故か感動した。あれが彼なりの最後の精一杯の抵抗なのだとしたら、とても悲しい。感傷を徹底的に排除しながらも、こういった胸を打つ描写を淡々と見せてしまうパゾリーニ演出は本当に凄いと思う。
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