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[コメント] 機動警察パトレイバー2 the Movie(1993/日)

執拗に戦争論を繰り返そうとする男たちは、みな主人公たる公僕たちの手で退場させられる。残された者たちの喜びを観るために、やはりこの物語は『パトレイバー』でなくてはならなかったのだ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







正直、テイストが明るめなTV版『パトレイバー』のほうが好きだった。主人公たる第2小隊はみな個性に溢れながら、その無軌道さゆえに、後藤隊長をして「独立愚連隊」と言わしめた連中だ。

しかしながらこの連中は、本作では全くの添え物扱いだ。レイバーも主役には成り得ず、現用兵器に近い兵器たちが首都圏を蹂躙する。そして主役となるのは、戦争の季節への「遅れてきた青年」…いまは老いさらばえ、フィクサーとしてこの国の戦争を語る連中だ。彼らはこの国に絶望しかけており、いま一度「平和ボケ」の日本人に戦争の真実を提示しようとする。後藤や南雲に彼らの言葉を遮る術はない。ともに同じ地獄の季節を味わってきた世代だからだ。

だから、まだ若い特車隊の面々によってそれは「行動」をもって否定される。彼らが行動ののちの成功に歓喜の声をあげる時、観客はその感情を共有できる筈だ。レイバーという決してあらゆる環境で無敵たり得ない機械でつねに問題を解決してきた彼らだけに、ボロボロになって引き上げられるレイバーは「愚連隊」の姿に重ね合わされる。そう、これもまぎれもない「レイバーと仲間たち」の映画だったのだ。

押井の感情は、人生の曲がり角を通り過ぎた者たちに代弁されていたのかも知れない。それゆえに、この街の未来を見たくなった、というフィクサーの吐露は、押井の若い世代への決して絶望しきっていない、むしろ期待といっていい心情に重ね合わされているようにきこえる。

(評価:★4)

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