コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 君たちはどう生きるか(2023/日)

前半ワクワクさせられるが、後半そのワクワクを昇華できずにハチャメチャになるギャグアニメのよう。勿論、概ね画力、画のクォリティは高く、一定の見応えはキープし続ける。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 夜の東京の街並み。屋根屋根を左にパン。眠る眞人。起こされて2階に駈け上がり、駈け降りる表現。まるで四つ足で駈けるよう。のっけから迫力のある演出と思う。お母さんが勤める(入院している?)病院が火事。これは空襲?と最初は思ったが、炎の中を駈けるイメージも含めて、はっきりと空襲を表す意匠はない。

 町中の戦車の行軍。戦争が始まって3年でお母さんは死に、東京を離れることになったというナレーション。これも東京大空襲の前にお母さんは亡くなった、ということかと思う。

 汽車の煙。地方の駅。自転車が引く人力車。着物姿の女性の降りる足。こゝ、肌理細かく見せる。しかし、これぐらいは今の日本のアニメなら当たり前のクォリティとも思う。この女性は夏子。お母さんに似ている、と眞人のモノローグ。

 父親はバスで工場へ。人力車の上で、夏子は眞人の手を掴んでお腹に。赤ちゃんの話。屋敷。うだつの上にアオサギ。この鳥は登場ショットから不穏。表玄関までの大きな石段。長い縁側。お婆さんたちが7人。7人の小人モチーフかと思う。お爺さんもいる。屋敷の敷地内には、大きな母屋の他に、池、眞人の部屋のある洋館(父と夏子もこゝが居所)、池の向こうの謎の塔といった構造物があり、これらの造型は、やはりとても見応えがある。

 眞人は学校の帰り道、地元の子と喧嘩になった後、石で右側頭部を殴る自傷行為に及ぶ。これってどの方向への悪意なのか分かりにくい見せ方だ。ただし、この後、ラストまで、右側頭部がハゲの絵面に機能する。いずれにしても、この主人公も登場から、ほゞ完成された人格を有しているようなキャラだと思う。ほとんど成長も描かれない。私には、俗物な父親よりも聡明に描かれていると感じる。例えば、鯉とヒキガエルの殺到シーンにおける落ち着き払った様子。弓矢の作成やアオサギとの対峙シーンの決然たる態度。さらに、複数個所で素直な面も強調される、都合の良いキャラだと思う。こういう人物は過去作でも何人も登場しているだろう。

 さて、前半は概ね、瞠目しながら楽しく見たが、最初にその不穏さがカッコいいと感じたアオサギに関しては、だんだん鬱陶しく感じられてきた。ちょこちょこと出し過ぎなのだ。それに、途中から喋りだすと、その悪声にとても違和感を覚える。眞人と一人のお婆さん(キリコ)が、白い服を着た夏子を追って入ったトンネルのような通路の場面。中にはアオサギがおり、眞人が射た矢は、追尾し、クチバシに刺さる。こゝでアオサギおっさんが登場、一転してコメディリリーフになる。この映画のハチャメチャさ(ギャグアニメ化)は、こゝがスタートと云っていいだろう。

 この後は第二部と云っても良いような別の世界のお話になる。不思議の国の眞人のパート、地獄めぐりのようと云ってもいい。しかし、海と雲と黄色の斜光、画面奥の大航海時代のような帆船、この景色は壮観で圧倒されたのは確かだ。金色の門も美しいし、明日香村の石舞台古墳のような墓地の佇まいもいい。石のモチーフはこの後も出て来るが、この墓地は、夢のように、ほったらかしになる道具立てだ。海辺のペリカンは、眞人への動物殺到モチーフにつながる。こゝに、一人登場する漁師のような女性が男まさりのユニセックスなキャラクターで、この人物も、過去作の多くの類似キャラを思い出させる作りだ。ワラワラという名の、昇天して上の世界の命になるという、精霊のようなキャラもそう。

 そして、火を操る特殊能力のある少女、ヒミ。これが眞人の母親なのだから、倒錯している。私とて、かなり気持ち悪いモノを感じるが、しかし、より重要なのは、眞人が夏子を母と認める部分だろう。ヒミも大叔父も、石の積み木や丘の上の宙に浮く大きな岩についても、眞人が夏子を母と認め、現実世界に戻って前を向いて歩んでいくための、勿体ぶった道具立てという見方を私はした。

 ただし、そんな穿鑿よりも、より表層的に私が書いておきたいのは、夏子が入っている産屋(うぶや)のカーテンがとても綺麗、ということや、後半のインコたちの造型がイマイチということの方だ。特にインコ大王を含めたインコ軍団のシーンはチープ過ぎて、ギャグアニメとしてもゲンナリするところだろう。インコのフンまみれになって現実世界に戻るアイロニカルな画面はギャグアニメとしての落とし前か。なんか照れ隠しのようにも感じた。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (9 人)セント ドド[*] tredair[*] ジェリー[*] けにろん[*] 緑雨[*] トシ[*] ペンクロフ[*] シーチキン[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。