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[コメント] 告白(2010/日)

映像の密度はすごい。
パグのしっぽ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







このコメントを書いている隣でも付けっ放しのテレビ画面には次々とCMが流されているのだが、それらを見ていると、30秒の映像に込められるメッセージの濃度に改めて感心させられる。視聴者にムラなく均一の感情を喚起させ、その感情を購買行動という製作者の意図したゴールへと結びつける。この単純でストイックな営みから生まれた方法論。中島哲也監督が本作品で見せる映像の数々も、映画的手法というよりはそちらの方法論に裏付けされたものだと感じる。冒頭、不穏な物語の始まりを告げる、机から落下する牛乳パックの映像で一気に感情を持って行かれた。この作品は何か大切なものが壊れる物語だということを無言で喚起させる、印象的なシーンだった。

一方の物語はというと、どうも物足りないというか、一番語ってほしいことを語ってくれていない印象が残る。私たちから見てあの年代の一番暗くて理解できない部分とは、家庭の中にではなく教室の中にあるのだ。思春期の子供の精神状態は複雑で…というような話をよく聞くが、誰も彼も何かしらの思春期は経験しているわけで、その複雑さが私たちの理解の範疇を超えることは無いだろう。思春期に考えることなんていろいろと屈折はしていても、その折れ曲がり方はありきたりなものがほとんどだ。私たちが本当に理解できていないものとは、その折れ曲がった精神たちが詰め込まれる「学校の教室」というブラックボックスだ。ブラックボックス内部でそれらの精神はどのような連立方程式に組み込まれるのか、そこを知りたい。知ることはできなくても、本作には仮説を提示してほしかった。そんな個人的な願望があったので、中盤以降、カメラの焦点が教室から外れて家庭へ、そして少年の内面へと絞られていく展開が非常に残念だったのだ(単に私の求めていたものと本作の語ろうとしていたものがそもそも違った、というだけでもあるのだが)。結局、元教師が陰湿な手段によりマザコン少年の自尊心を叩き折ることでカタルシスを迎える安っぽいオチになったのが、返す返す、もったいない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)太陽と戦慄[*] chilidog[*] おーい粗茶[*] けにろん[*] 空イグアナ[*] イライザー7[*] 林田乃丞[*] セント[*]

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