[POV: a Point of View]
男はつらいよ;アナーキーバスターからうんちく説教親爺への変貌
A:恋愛道まっしぐら期(第1作〜第13作) B:仲人道まっしぐら期(第14作〜第41作) C:うんちく親爺道まっしぐら期(第42作〜第48作)
B | 男はつらいよ 寅次郎子守唄(1974/日) | 恋敵を物語の主線上に配置したバージョンとして後の『葛飾立志篇』『寅次郎恋愛塾』等に連なる系譜の初作だろう。しかし、十朱と寅の印象的な絡みが少なく印象が薄い。前半の九州の港町の風情が格別に良く、上條も好感の持てるキャラクターだった。 | 投票(5) | |
B | 男はつらいよ 寅次郎相合い傘(1975/日) | お嬢さん女優浅丘ルリ子の演じる裏街道ヒロイン「リリー」のキャラは評価が高いが何だか作り物めいて見える。コテコテすぎるのかも知れない。同じ道往く者同士の連帯愛はシリーズの決め事を破壊させかねない。そういう苦渋が終盤の定形的な展開に匂う。 | 投票 | |
B | 男はつらいよ 葛飾立志篇(1975/日) | シリーズで再三サブテーマのように取り上げられる「教育」が決して教条的にならないのが山田の上手いとこだと思う。中年勉強バカ同士の恋を描いて本線から離脱ぎみだが小林桂樹が巧く飽きない。役名「田所教授(『日本沈没』)」のベタギャグも好感。 | 投票 | |
B | 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け(1976/日) | 重心を2つ持たせて成功した例もある(『知床慕情』)ので一概に言えないが、宇野重吉が立ちすぎて太地喜和子のキャラが霞む。そして、霞むには惜しすぎるキャラなもんだから重吉翁が鬱陶しくさえ思えてくる。 | 投票(1) | |
B | 男はつらいよ 寅次郎純情詩集(1976/日) | 京マチ子という超弩級のマドンナを迎えたにしては余りにミスマッチだし食い足りない展開。同系若尾文子も使いこなせなかった山田の弱点が露呈。檀ふみで茶を濁さざる得ない序盤が無駄で虚しい。 | 投票(1) | |
B | 男はつらいよ 寅次郎と殿様(1977/日) | 毎度お決まりの寅の片恋話でもたなくなった果てのアラカン登用としてものり平の絶妙のサポートも冴えてシリーズ中屈指の至芸を見せる爺コンビ誕生と相成った。寅の拗ね様も心地よい論理性を維持している。 | 投票(2) | |
B | 男はつらいよ 寅次郎頑張れ!(1977/日) | シリーズ初見作なので、どうも客観的に比較できないのだが、傍系の若者の恋愛に隠れて寅自身のマドンナとの絡みが希薄ではあった。又、輪をかけて藤村志保が影薄い。しかし、渥美清の話芸に心底ぶったまげたのは事実。 | 投票(2) | |
B | 男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花(1980/日) | 寂れた風情がしっくり来る寅に常夏の沖縄が似合ず、シリーズのキモである孤独感は表出されずじまいだ。又、リリーと同居するという決定的な設定を否応なく組まざるを得なくなってもシリーズ存命の為に、肝心要なところに踏み込めない煮え切らなさがイラつく。 | 投票 | |
B | 男はつらいよ 寅次郎紙風船(1981/日) | 「男」から「父」への変遷の端境期に登場した『寅次郎頑張れ!』と似たマドンナ2枚看板で音無も岸本も良いだけに、どっちつかずに分散した構造が惜しい。シリーズ中興の80年代作中出来の良い部類だと思う。 | 投票(1) | |
B | 男はつらいよ 花も嵐も寅次郎(1982/日) | 合わぬと思ってた裕子とジュリーが思いの他山田世界に親和してるのが意外だが後年の2人を見れば然もありなむ。微妙な均衡点で世界の調和が危うくも成立した。寅屋のシーンも前後のシリーズ中では充実してる方。寅も未だ当事者に片足はかけてる。 | 投票 | |
B | 男はつらいよ 柴又より愛をこめて(1985/日) | 低迷期には何をやっても上手くいかないという悲哀感を自虐にまで転化し得たら新たな地平が開けたかもしれないのだが、栗原小巻では何を付加し得ようもない。あけみこと美保純ちゃんをこそ最前線に駆り出すべきであった。 | 投票(1) | |
B | 男はつらいよ 幸福の青い鳥(1986/日) | 庇護者と化した寅が最早、物語を牽引するに適わぬことは知れたことなのだが、にしても途中、別映画かと思える悦子・長渕への尺の割き方で、これが又相も変わらぬ時代錯誤感を纏うのも毎度のこと。筑豊シークェンスが総じて良いのまでルーティーンだ。 | 投票(2) | |
B | 男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日(1988/日) | いくら流行とは言え寅次郎とマドンナのジョイントとしては俵万智は機能すべくもなく「やむを得ず 大学の講義で バカ話」するのが最大の見せ場とあっては三田佳子が気の毒にさえ思えてきた。多少はしんみりするのが救い。 | 投票(2) | |
B | 男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく(1978/日) | 慎ましやかな人々を描いてこその山田演出は花形スターをマドンナに持ってきて端から届かぬ感を漲らせシラける。SKDの楽屋裏の描写が旅一座的猥雑さを混じえて良いのだが、華のあるべき場面まで泥臭いのでは救われん。武田の起用も少々うんざり。 | 投票(1) | |
B | 男はつらいよ 噂の寅次郎(1978/日) | オーソドックスに回帰してみたものの出涸らしエッセンスばかりで行間を埋めたような出来だ。ある意味「不幸」を弄んでいるかのようなリアリティを欠いたヒロイン造形であり、それこそインテリがでっちあげた庶民物語。奇しくもシリーズの1側面を露呈した。 | 投票(1) | |
B | 男はつらいよ 翔んでる寅次郎(1979/日) | 階級が滅んだ時代に、形骸化したそれに拘る姿勢は、底辺からそれを撃つかにみせかけ続けた山田の姿勢がポーズにすぎないことを逆説的に露呈させる。異端の桃井起用も更なる無惨さを煽るだけ。シリーズでも最悪の部類。 | 投票(1) | |
B | 男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(1982/日) | ルーチンワーク的側面から破綻しているわけでもない。寧ろ出涸らし的要素を相変わらず巧みにリミックスしているが、シリーズ中特筆すべき暗さ。薄幸のヒロインをサディスティックなまでに突き落とす作劇にいしだあゆみで暗黒舞踏の域に迫る世界が現出。 | 投票(2) | |
B | 男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎(1984/日) | 浅丘ルリ子や岸本加世子といった同系列の女フーテンに比して世荒びの疲弊感も天与の楽天思考も無いマドンナ。寅が加担する意味も理解不可能。加えて渡瀬の役回りなど最後まで煮え切らない展開にも唖然。総じて低調な90年代諸作の中でも低位作。 | 投票(2) | |
B | 男はつらいよ 寅次郎真実一路(1984/日) | 浮世離れた世界の住人だから成立する物語も証券会社の会議室でバナナのお土産ってんじゃ太平楽過ぎで痛々しい。これがサラリーマンについての山田流一考察だとすれば現実との認識ギャップに欠伸でも出そうだ。甘っちょろ過ぎ。大原も全く精彩がない。 | 投票 | |
B | 男はつらいよ 寅次郎恋愛塾(1985/日) | 山田洋次の脳内思考で形成された現代的モテナイ君平田満が恐ろしく共感を拒否するキャラクターで、それに物語を乗っけようとした終盤の追っかけは無惨極まりない。加えて樋口はシリーズには全く馴染まない感じ。 | 投票(1) |
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