A | ★5 | (秘)色情めす市場(1974/日) | 母娘の確執という閉じた世界は、破綻して爆死する者たちと並置されて浪花ど根性的な生の讃歌へ反転する。舞台の釜ヶ崎・安藤のモノクローム・芹の虚無と台詞廻しの3者が密接不可分な領域で変容・獲得した俯瞰の視座。リアリズムと寓話の奇跡的融合。 | 投票(1) |
A | ★5 | インディアン・ランナー(1991/米) | ベトナム戦争が遠くに聞こえる片田舎の置き去りにされた物語。兄弟の思いの平行線は交わるどころか何時しか限りなく遠ざかる。妻に先立たれたブロンソン親爺の空虚。寄り添う事は誰にもできない。ショーン・ペンはただ見守る。限りない愛惜をこめて。 | 投票 |
A | ★5 | 島国根性(1990/日) | 極めて日本的私小説世界を描いても他の同系作品から遙かな地平に到達し得たのは渡辺文樹作であったという1点に尽きるとは思うが、とにかく腹を抱える事請け合いの抱腹絶倒ムービー。全てを曝け出すこいつの前で小手先の脳内映画は総てひれ伏すしかない。 | 投票 |
A | ★5 | 裸足のピクニック(1993/日) | 悪魔に魅入られたかのような道行の、逸脱の鶴瓶打ち展開の予測のつかなさに於いて際立っている。少女が主役だが描写は荒削りで骨太い。ブラックでシュールなサブキャラが立ちまくって、クライマックスは、ほとんど悪夢の世界。まるでブニュエルのように。 | 投票 |
A | ★5 | トパーズ(1992/日) | スノビズムの権化のようだった村上龍の脳内最奥部に潜む持たざる女子へのシンパシー。それが真摯で直截な孤独表現を纏い出てきたのが全く予想外だ。醒めたバイオレンスとハードなSM描写も媚びていないが、二階堂ミホの全存在でのリアリティこそ肝。 | 投票 |
A | ★5 | フェイシズ(1968/米) | 中産階級夫婦の倦怠を一切の作劇上の仕掛けを弄さずに描き前半は戸惑うのだが、そうやって綴った会話劇が中盤以降にいきなり転がり出す。映画が自走し出す瞬間。脳細胞は一気に覚醒し目を瞬く間も惜しい。破壊された嘗ての映画の在り方に引導を渡した衝撃作。 | 投票(1) |
A | ★5 | グリフターズ 詐欺師たち(1990/米) | 主役3人は完璧に依存から無縁な生き様を貫き、しかも、終盤では親と子や男と女のしがらみを越境していく。コンゲーム映画の体裁を纏い人間の深淵に迫る。スコセッシが加担しバーンステインのスコアがサポートするそのクールでヘヴィな有り様。 | 投票(1) |
A | ★5 | 3−4X10月(1990/日) | 平素がどうであれ男達が有する内に秘めた怖さの突発的表出に対する既視感を繰り返しクローズアップ。わけてもたけし・渡嘉敷コンビの個人史に基づくリアリティが傑出してる。シュールな展開も脳内組成でない肌感覚。北野最高作。 | 投票(2) |
A | ★5 | テオレマ(1968/伊) | トリックスターを介した図式的展開を想像していたが、ミニマムな家族5人の事後の顛末が世界の終末を描くことにまで伸延されてしまう。その加速的な枠組みの破壊に身を委ねる快楽。そして、又それは相当に適当でいいかげん。紙一重の者にしか描けない代物。 | 投票(3) |
A | ★5 | Hole(1998/台湾=仏) | 世紀末・疫病・雨と1歩間違えればあざとさキワキワのキーワードのオンパレードだがダサ直球を混じえて巧くすり抜けた。シュールな意匠は純なハートと表裏を成し、人は孤独地獄から救済されねばならないという確信が胸を打つ。 | 投票(1) |
A | ★5 | ウィークエンド(1967/仏=伊) | 淡彩のアパートから始まる物語が緑の沿道と青い空、白い雲と原色の車の列に巻き込まれる。ポップアートの極みにファルスとスペクタクルが混在しゆく有り得なさが、そこに留まらずモラルを蹂躙し最果てまでいっちまう。分水嶺に立った覚悟あればこその境地。 | 投票(2) |
A | ★5 | 皆殺しの天使(1962/メキシコ) | 「皆殺す天使」に魅入られた「ブルジョワ」へのブニュエルの愛憎が初期の尖鋭な前衛と後期の豊穣な諧謔の過渡期に絶妙の均衡で融合された最高到達点。形而上のアイデアは数多の具象な設定を伴い初めて真の輝きを獲得する。その隠し抽斗の存在こそ命脈。
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A | ★5 | ミスター・グッドバーを探して(1977/米) | 見え透いた扇情的題材に見えるが、軽やかにニュートラルで、故に描かれる孤独も抜きんでる。息つく間もないカッティングの冴えは自走しシュールな時制の垣間からドッペルゲンガーが顕現するのだ。ダイアン・キートン代表作。 | 投票(1) |
A | ★5 | ねえ!キスしてよ(1964/米) | 計り知れないコード横溢の時代に間隙を縫ったキワキワ感がソソる。インモラリストワイルダーのチャレンジ精神の歪な輝き。ウォルストンの地味さが徒花に徹したノヴァクを輝かせる皮肉。代役の代役マーティンの当たり。全ては順目に裏返った。 | 投票 |
A | ★5 | 病院で死ぬということ(1993/日) | 死ぬということを描いた部分の抑えた台詞回しや固定カメラに作為を感じるとしても、この死にゆく者にしか感じ取れないと思わせる市井の風景や何気ない人々の営みの美くしさと愛おしさ。言葉で「生きろ」と言うより百万倍の効果がある。少なくとも俺には…。 | 投票(3) |