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[POV: a Point of View]
釣りバカ日誌シリーズ  追悼 西田敏行さん
 

■時代と格闘した喜劇   A・・昭和天皇崩御時代  B・・バブル経済崩壊時代  C・・金融機関倒産時代 D.E・・小泉新自由主義競争時代  F・・就職氷河期とその後
A★4釣りバカ日誌2(1989/日)ワンマン社長(三國連太郎)が、美女(原田美枝子)を前にして見せる戸惑いと狼狽ぶりがなかなか切ない、今でも充分通用するアンチバブル社会映画。渥美の寅さんを意識してか同僚達を前にして西田敏行の一人語りが入るも、これはさすがに今ひとつ。 投票
A★4釣りバカ日誌(1988/日)「合体」艶話しを随所に取り込みながらも栗山富夫演出は節度ある上品な笑いで作品全体を包み込む。浜ちゃん(西田敏行)、みち子(石田えり)夫婦とスーさん(三國連太郎)の微妙な心と立場の距離が縮まって行くさまが微笑ましい佳作。 投票
A★3釣りバカ日誌3(1990/日)初恋、時のうつろい、父性愛、子づくり、リゾート開発と盛りだくさんで複雑なわりに作りがいささか雑で焦点が定まらない。息子のお土産持って残業する谷啓の悲哀が胸を打ち、地球儀片手に浜ちゃんの左遷先を検討する重役たちのシーンはノリが良く笑えた。 [review]投票
B★4釣りバカ日誌スペシャル(1994/日)レギュラーに加えて西村晃松尾嘉代田中邦衛清川虹子の存在感でルーチン話に厚みとアクを加える巧みさはさすが森崎東監督と山田洋二脚本。ブルジョワの憂鬱と庶民のガサツさの混在が、懐かしき60、70年代の松竹喜劇のにおいを醸す。投票
B★3釣りバカ日誌6(1993/日)やはり栗山富夫監督は、ドタバタギャグより状況で笑いを誘うの上品な演出の方が上手い。浜ちゃん、スーさんの入れ替わりというオーソドックスな仕掛けながら、西田敏行三國連太郎の巧みな芝居が笑いにプラスして味わいを生んでいる。投票
B★3釣りバカ日誌7(1994/日)名取祐子の存在感は寅さんシリーズのマドンナを髣髴とさせ良いのだが、ハマちゃん(西田)のすねっぷりとスーさん(三國)の対応が子供っぽ過ぎてシラケる。石田えりを器用にトレースする浅田美代子はさすがだが、やはり浅田流のみち子さんが見たかった。投票
B★3釣りバカ日誌4(1991/日)前作までのスーさん中心のネタ話から、一転浜ちゃんに焦点があたって俄然西田敏行のノリが良くなる。一生懸命さは伝わるものの尾美としのり佐野量子カップルから真剣さが伝わらず、今ひとつ冴えない。相変わらず谷啓の板ばさみぶりが良い。投票
B★2釣りバカ日誌5(1992/日)赤ん坊鯉太郎に振りまわされる大人たちのキャラクターが希薄なうえに、緊張とスピードが足りず、ドタバタギャグは空回り。予定調和を突き抜ける笑いは生まれずじまい。後半の丹後半島の風光は、バブル崩壊後の働きバチたる男どもの郷愁を誘って悲しくも美しい。投票
C★4釣りバカ日誌8(1996/日)室井滋の好演で和美と博士(柄本明)のサブストーリーが際だつ楽しい一品。釣りバカコンビとの投げ釣りシーンも微笑ましい。後半の会社幹部総出の渓流釣りのドタバタぶりも大いに笑わせてくれる。オーソドックスながら山田洋二の脚本が冴える佳作。投票
C★4釣りバカ日誌9(1997/日)お約束のスーさん(三国)、佐々木課長(谷)に、部長(小林稔侍)との絶妙な陰陽ギャップが加わって西田敏行のノリが最高潮で浜ちゃんパワーが全開。仕事人間を皮肉る恐るべし浜田人脈に、本当にこんな奴がいそうで私も考えさせられてしまうのであります。 投票
C★3花のお江戸の釣りバカ日誌(1998/日)撮影と美術に時代劇の手だれ藤原三郎倉橋利昭を起用した時点で、すでにこの作品の画はシリーズとは別物で、となるとやはり期待はふくらむもので、たとえ無いものねだりと笑われようが、この程度の予定調和話では肩透かし感は否めない。もったいない。 投票
C★3釣りバカ日誌10(1998/日)バブル破綻の不況期にこれを書くのが良くも悪くも山田洋次。今風にアレンジされてはいるものの、お得意のステレオタイプの労働青年(金子賢)賛歌も結構だが、その時点で話し展開のルーティン化は避けられず、誰がどう撮ってもこの程度の上がりはお約束。投票
D★3釣りバカ日誌12 史上最大の有給休暇(2001/日)都知事を辞した青島幸男を引っ張り出してきたわりには、役作り以前にすでに本人に精彩なく、肝となるべき宮沢りえとの絡みに何の情緒も哀愁も漂わない。いつになく三國も元気なく、吉岡の定番役にも新鮮味なし。西田の孤軍奮闘で何とか笑えた。投票
D★2釣りバカ日誌イレブン(2000/日)ウサギ事件は笑えるものの、後半の笑いの起爆剤となるべきリストラ計画と沖縄エピソードが離反して緊張感もパワーも不足のままクライマックスへと突入しあえなく空振り。ベテラン長沼六男の安定感ある撮影が、かえって新進木本克英監督の気勢を削いだか。投票
E★4釣りバカ日誌14 お遍路大パニック!(2003/日)昭和の松竹喜劇の呪縛からなかなか抜け出せなかった本シリーズだが、小気味良いテンポや、バーでのライブから「よさこい祭り」まで音楽の扱いが上手く朝原雄三演出に今までにないセンスを感じる。西田と三宅のからみも楽しく、高島礼子も色っぽい!投票
E★4釣りバカ日誌15 ハマちゃんに明日はない!?(2004/日)小津へのオマージュを込めた脚本を、しっとりとした叙情コメディに仕上げた朝原雄三監督の手腕に感心する。何やら不穏な気配が漂う役員会議室から、秋田の自然や街並み、日本家屋の懐かしさを見事に捉えた近森眞史のキャメラの貢献度も多きいい。 [review]投票
E★4釣りバカ日誌13 ハマちゃん危機一髪!(2002/日)大ボケ丹波哲郎をメインに据えて、防戦一方の西田(浜ちゃん)の苦しいツッコミで笑いをとる新パターン。間に入る鈴木京香の役をわきまえた位置取りも上手い。少し寂しくもあるが、あえて三國(スーさん)を脇に置くことでマンネリ打破に成功した佳作。投票(1)
F★3釣りバカ日誌17 あとは能登なれ ハマとなれ!(2006/日)朝原演出と近森キャメラは相変わらず堅実で安心して観ていられるのだが、脚本が定型過ぎて面白みに欠けるのが難点。大泉洋のキャラクターも中途半端で、イイ人なのかダメな人なのか良く判らない。となると弓子(石田ゆり)の心の揺れも見えるはずがない。投票(2)
F★3釣りバカ日誌16 浜崎は今日もダメだった♪♪(2005/日)前作に続き小津ネタだが、今度は一転、冒頭からミュージカルあり、ライブあり、ドタバタありのバラエティ風味付け。朝原雄三監督の実力は本物。イラクでの日本人拉致騒動の世論にチクリと釘をさすスーさん(三國連太郎)の苦言は正論で泣かせます。 [review]投票(1)
F★3釣りバカ日誌18 ハマちゃんスーさん瀬戸の約束(2007/日)数々の修羅場をくぐり抜けてきたに違いない老実業家スーさん(三國連太郎)が垣間見せるダークな一面がなかなか不気味でカッコよいではないか。戦後50年の日本の幸福と成功の裏にひっそりと潜む老人たちのピカレスクに若き日の友情と情熱を(勝手に)見た。投票
■時代と格闘した喜劇(2009/04/23のblog「ぽんしゅう座」投稿記事より転載) 松竹の「釣りバカ日誌」シリーズが今年を最後に終了するのだそうだ。スペシャル版を含めて年末に公開される作品で全22作になる。シリーズは1988年12月24日に「男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」の併映作としてスタートしている。 それは、とても微妙なタイミングであった。映画公開から二週間後の翌89年1月7日に、昭和天皇が崩御した。それまでの約半年間、日本はバブル景気に浮かれつつも重苦しい自粛ムードが支配するという矛盾にみちた空気に支配されていた。きっと、喜劇映画にとって幸福なスタート時期ではなかっただろう。 91年、バブル景気崩壊。失われた10年とも15年とも呼ばれる時代が始まる。その後も、シリーズは波乱のなかで作り続けられる。94年まで併映作として年末作品の看板であった渥美清が96年に死去。渥美の不在と長引く不況は松竹本体をもゆるがす。95年に開設されたテーマパーク「鎌倉シネマワールド」はわずか3年で閉鎖。ついに、64年続いた松竹大船撮影所も2000年に閉鎖、売却されてしまった。 喜劇でありながら「釣りバカ日誌」シリーズには負の時代に翻弄されながも格闘し、ときに停滞し、あるいは激変した時代性をしたたかに取り込んできた強靭さを感じる。 今年の年末は劇場で最終作を観てみようと思う。それから改めて、シリーズ20余年をふり返ってみたいと思い始めた。 ●〔西田さんと温泉宿で〕→■天国の駅、あるいは世の中との距離 〜3月18日から20日までのこと〜(2009/03/19blog「ぽんしゅう座」投稿記事)https://blog.goo.ne.jp/ponsyuza/e/53fd6ed2517e2319b9326417f1aec994
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