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ジェリーさんのコメント: 更新順

★3まぼろし城第三話木曽路の凱歌(1940/日)大団円。この映画には江戸時代の標準の風景としての田園が登場しない。森と山岳撮影が中心で、敵のアジトがフリッツ・ラング風の地下冥界を思わせる。鉱物質の美しさが新鮮で、ラスボスとの対決まで魅力がいや増す。[投票]
★2まぼろし城第二話死の旋風(1940/日)二つの敵対集団の関係が少しずつ見えるとともに、絵図面の奪い合いが過激になる。馬の使い方が実によく、手練れのスタントが当時いたことが分かる。編集が相変わらず悪い。ローキーなのは劣化か、もともとの調子なのかが不明。[投票]
★2まぼろし城第一話飛騨の渦潮(1940/日)伝奇風味濃いプロットが大好きである。映像はドイツ表現主義の影響を感じる。伝法な旅の女、薬屋に身をやつした隠密、金山の地図、不気味な神像を崇拝する仮面の邪教集団と、道具立てがそろった。しかしカットと間の取り方がどうにも悪い。[投票]
★3網走番外地(1965/日)8畳の共同生活、懲罰房、零下20度の雪原と、極限状態に人間を置くことの好きな石井輝男の描写が冴える。追い詰められて発揮される不思議にアナーキーなエネルギー。突如噴き出すヒューマニティ。無骨さを魅力にして輝かしい。[投票]
★3人生劇場 飛車角と吉良常(1968/日)沢島版と比べ、展開を絞った内田版が成功しているように見える。吉良常の決着も内田版の方が上だ。しかし趣味的には沢島版に軍配が上がる。生真面目で正調な本作よりも、原作を行き違いラブストーリーに仕立てた沢島版の乱調を好む。[投票]
★3カーネギー・ホール(1947/米)不思議な映画である。音楽演奏がメインなのか、劇映画を見せようとしているのか曖昧である。故に感動はない。しかし感興は強い。綺羅星のごとく名匠巨匠が登場し、圧巻の演奏を見せて聴かせる。「見世物」という映画原点に立ち還った印象がある。[投票]
★3人生劇場 続飛車角(1963/日)原作の縛りかもしれないが、続編はうねりの大きいストーリーに振られ、人物描写にち密なニュアンスを欠く。東京やくざ親分衆や日本帝国陸軍など巨大な世界が侵入し、義理人情のはかない一夜花のような、任侠社会の濃密な艶が褪せた。[投票(1)]
★4人生劇場 飛車角(1963/日)沢島忠演出は状況の客観描写以上に、引き受けた運命に身を焼かれる哀切性表現を重んじ、季節描写を重ねて時の無常さを感じさせる。月形龍之介の剛毅、佐久間良子の幸薄さは絶品。鶴田浩二高倉健の始末のつけ方で−1。[投票(1)]
★5日本侠客伝(1964/日)このジャンルを一挙に立ち上げた東映の経営者魂と企画力は日本映画史の最大の事件の一つだ。儀式と修羅場が絵的に見事なコントラストを作る。マキノ雅弘の手腕は構図、カット、明暗と、すべてを支配統率し最高だ。中村錦之助の参加も素晴らしい。[投票(2)]
★3天狗飛脚(1949/日)この監督私的注目株で、新鮮な風を浴びた。主人公と飛脚屋の娘の恋愛が爽やかな底流を作る人情劇。各シーケンスが短めで軽快なリズムを刻む。大胆な全力疾走のショットが映画最大のヤマ場を盛り上げる。映像の省略が山中貞雄ばりに思い切りよいがやや粗い。[投票]
★3醜聞(スキャンダル)殺人事件(1952/米)ストーリーは予測可能なレベルの素直さ。しかし俳優一人一人に見せ場をうまく作る演出はなかなか。リタ・ヘイワースの魅力(あのダンス、あの乱れ髪!)もさることながら、彼女だけでなく女優陣皆良いのだ。特に存在感確かな召使いジュニア―タ・ムーア[投票]
★4マッチ工場の少女(1990/フィンランド)北欧の空気そのもののように澄み切った映像。抑制のきいた簡潔なプロット提供。これにより主人公の心の動き一本にフォーカスを絞り鑑賞する至福を味わえる。観客の想像力をどれだけでも受容できる器の大きさをこの短尺の映画はもっている。[投票]
★3猟人日記(1964/日)日本製ノワールの佳作と言っていいだろう。かなり複雑な筋ながら破綻なく見せる。前半と後半とでは主役が変わる。この転換が鮮やか。伏線の回収が小気味よい。男と女の関係の淫靡な不可思議さがじっとりと描写されている。テレビ放映は無理ですね。[投票]
★3忘八武士道 さ無頼(1974/日)この時期の映画には、血と裸が大量投入されるようになって、一見表現自由度が高まったかに見えるが、かえって作品と俳優のスケール感を小さくしてしまった。本作もその例に漏れないが、流れに乗って見せていく面白さがある。池玲子意外の演技力。[投票]
★3日本やくざ伝 総長への道(1971/日)ものづくりの手法で、固定部と変動部をはっきりさせて云々というのがある。任侠映画はジャンル総体としてまさにそれ。マキノ正博の持ち味がこのフォーマットの中で生きることとなる。構図の美しさが比類ない。そして女性を撮る上手さを、本作で発見した。[投票]
★3江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間(1969/日)つたないが豊穣。非倫理的でありながらかつ倫理的。自己解体と自己再生が共存し、厭世的孤立主義と社会活動家的共同体主義が合体している。江戸川ワールドを深く理解の上するすると分かりやすく見せてしまう錬金術師のような才能を感じた。[投票]
★3男と女 人生最良の日々(2019/仏)老境に入った男と女の感情の共鳴が、実に切ない。過去を取り戻したい執着をごく自然に乗り越えつつあるかに見える二人の老人には金色の後光が射す。しかし、それが皮相的な見方にすぎないことが最後に分かる。 [review][投票]
★2ヨランダと泥棒(1945/米)撮影も立派、美術も立派なのだが、おとぎ話過ぎる展開についていくのは実ににしんどい。もっとフレッド・アステアを躍らせてほしかった。ルシル・ブレマーをスターにしたかったというのが、アーサー・フリードの主要目的だったのではないか。⇒ [review][投票]
★3夢のひととき(1945/米)ストーリーが無理筋で、王女の恋、主人公の階上に住む娘の恋いずれも、もっと描きようはあったはずだ。なにより、ベルボーイ演ずるロバート・ウォーカーが甚だしいミスキャスト。それでも、屋上の朗読シーン、娘の夢のシーンなど、MGMの底力を見せるし、2人の女主人公の夢幻の如き美しさに心奪われる。[投票]
★2TAR/ター(2022/米)俳優らしい演技は、ケイト・ブランシェットにだけ許され、他の俳優は意図的な方法論として「普通の人」の演技が強いられているかのようだ。確かに新鮮味を感じたのは事実ではあるが、ストーリー、照明、美術いずれも優等生くさいメッキ映画だった。[投票(2)]