コメンテータ
ランキング
HELP

ジェリーさんのコメント: 更新順

★5野菊の如き君なりき(1955/日)再見しても初見の感動が沸き起こる。信州の風景と、杉村春子浦辺粂子の存在感が回想のシーンを豊かに膨らませていく。そして、笠智衆を登場させる演出は21世紀になって新たに変奏される。詳細はReviewで。 [review][投票(2)]
★2オンディーヌ 海辺の恋人(2009/アイルランド=米)オンディーヌ伝説と現代とを結びつける媒介として子供を利用するという、くだらない小細工にしらけた。無理なものは無理で、感興が深まらない。脚本の土台組が誤っているので、コリン・ファレルの好演も、アイルランドの田舎の港町の美しい風景描写も無駄に終わる。[投票]
★3摩天楼(1949/米)俗だがよくわかる筋回し。個人の尊厳と自己責任の両面貼り合わせの価値観への傾斜が時に危険なゾーンにまで達してもゆるぎない点、アメリカは今と変わらない。強い個人主義を奉じる朴訥な男の役をゲーリー・クーパーはずっと演じてきた。ゆえにこそ愛される。当時のマット画の最高水準が見られる。[投票]
★2メリー・ゴー・ラウンド(1981/仏)劇伴演奏者2名の登場でスタートし相当面食らう。しかし、その後冒頭30分は非常に闊達に進み実にミステリアス。やがて主筋に関係のない登場人物が登場する。キャメラの動きの魅力に負けて筋の解決はどうでもよいと思わせるところはあるが、モーリス・ガレル除き俳優の弱さいかんともしがたい。[投票]
★4水の中のナイフ(1962/ポーランド)ミニマルで隙のない演出に小躍りする。前半は、貧者と富者、大人と若者という対立軸上の男性が中心に描かれるが、後半、女性が存在感を増して対立構造を無化していく。湖面の圧倒的な量感、波の輝映を収めたモノクロ画面が美しい。狭い空間内のキャメラが魔術師のようだ。[投票]
★4天使の涙(1995/香港)鉈で木材を粗彫りしたような風合い。細部説明省略の思い切りがよく、若い世代の切実な感情表現に集中できた。離れてゆく男女間のみれんを雄々しく骨太に描き、その強さに撃たれる。夜のロケ撮影が完璧。カッティングが素晴らしい。音楽の選曲は神業級。[投票]
★2ノロワ(1976/仏)ギリシア古典劇のような趣。復讐を儀典化して描くという大胆な試み。他所事浄瑠璃のような音楽と演技の共存と、舞踏のような所作の面白さ。主人公に宿る怨念の一貫性が見事に描かれた。撮影も一級品。しかし残念なことに、鈍重さと晦渋さが立ち込める。[投票]
★5こわれゆく女(1975/米)よくぞ作ったり! 魂に斧が撃ちこまれた。執拗なまでに丹念な演技で狂女を表現したジーナ・ローランズが文句なし。幼い子供たちがアクセサリーではなく、本筋に参画し、物語に強い緊張を導く素晴らしい脇役として活躍する。[投票]
★3シン・ウルトラマン(2022/日)オリジナルのTV番組の世界観と怪獣キャラクターをうまく圧縮した構成となっている。擬音の復活再生がリアルでオリジナル制作者へのレスペクトを感じさせてうれしい。ジャミラ、シーボーズ、ピグモンなどのシリーズ怪獣の外れ値的存在を登場させる外伝も見てみたい。[投票(1)]
★3勝手に逃げろ/人生(1979/スイス=仏)出来事が生起した順序に描かれているように見せるのが普通の映画。この作品は映画の本質がパッケージ化された時間の羅列であることがわかるように編集されている。また、映画という虚構の暴き立てと並置して貧困も暴力も男女差別もリアルにあふれている。並置(モンタージュ)の恐ろしさここに極まる。[投票]
★3ウィークエンド(1967/仏=伊)ノイズと長回しとアジテーションで画面は、輝いているというよりテカっている。映画の無力さ、言説の無力さを知り過ぎてしまっている山師の、はらわたふりしぼっての咆哮だ。防衛的であることと攻撃的であることが一致してしまうという、人間世界のなんという残酷さ。[投票]
★3踊る不夜城(1937/米)冒頭タイトル部の煌びやかさに驚く。登場する芸達者たちが豪奢。主役二人はもちろん、アステアばりの優雅さを見せるジョージ・マーフィーや、ブロードウェイの伝説だったというソフィー・タッカーなどめったに見られぬ俳優が登場し彩を添えた。 [review][投票]
★2イヴォンヌの香り(1994/仏)語られるのはオルフェウスとエウリュディケー、イザナギとイザナミの昔に戻れない今の男と女の話。男女が一つになることの社会性が薄くなり、性愛と遊蕩のみ拡大視されてしまうオブセッションの時代を表現。にしてもつまらない。イヴォンヌの誂えは、そうとうグレース・ケリーを意識してないか[投票]
★3踊るアメリカ艦隊(1936/米)フィナーレのエレノア・パウエルのダンスは、まばたきする暇も与えない。ジェームズ・スチュアートの歌も意外にうまい。”I've got you under my skin.”と”Easy to love”の2曲はスタンダードになった。コール・ポーターの書き下ろし。これでこの映画は永遠に残る。[投票]
★3リリー(1953/米)正調MGM流の映画作りに惜しみなく拍手を送りたい。美術、撮影、音楽ができの悪い脚本をしっかりとカバーした。レスリー・キャロンとパペットたちとの対話のシーンの筆舌に尽くしがたい美しさ。ここが踏み台となって見事な少女の成長物語となっている。 [投票]
★4反撥(1965/英)発症以降を描かなければ今日的ではなくなった時代なので、今見ると古臭さは否めない。しかし、今、これ以上病的状態を描ける監督と女優などいない。崩れたバランスをここまで振幅激しく描けたことはやはり凄いことだ。 ラスト、荒れに荒れた姉の部屋の緊密な接写が、余韻表現として実にふさわしい。[投票(1)]
★3キカ(1993/スペイン)爆笑できるシーンがいたるところにある。状況と人物が荒唐無稽で、目が痛くなりそうなカラフルな画面もすばらしい。展開も類似例を見たことがなく、安易なジャンル分けを許さない。どの俳優も間の取り方がうまい。[投票]
★3護られなかった者たちへ(2021/日)避難所や遺体安置所、ばあさんの家のセットなどが実にリアル。この再現力のおかげで底光りするフィルムになった。地に足の着いた演技陣で、画面に現れない「護られなかった者たち」の心のおらびも感じ取れる。二人の刑事の少し荒んだざらざらした質感が良かった。[投票(1)]
★3アメリカの影(1960/米)画面の滑らかな流れやカタルシスの提供といったハリウッド伝統語法がものの見事に軽んじられた。人種差別という重いテーマへの堂々としたアプローチが潔い。人と人の距離の稠密感が特徴的で斬新な画面。ジャズ即興演奏が絶妙にマッチして実にクール。[投票]
★5ゴーン・ガール(2014/米)家庭という密室の中の悪感情が、悲鳴をあげたくなるくらい濃く盛り込まれる。我々はどこに行くのかわからなくなるが、それは目隠しをされているからではない。全てはフィルムに焼き付けられている。素晴らしい脚本と冴えた演出と凍りつく温度感の絵づくりの奇跡。21世紀にふさわしいフィルムノアールの誕生に立ち会えた。[投票(1)]