コメンテータ
ランキング
HELP

3819695さんのコメント: 更新順

★4海炭市叙景(2010/日)すべての画像が喪失感を指し示している。“何か”が失われてしまった。だが本当に“何か”などというものがかつてあったのか。「確かにあったはずだ」と、映画は古い八ミリフィルムを回しながら静かにタイトル・インする。あまりにも私たちに似すぎた彼らを見守るにつけては、劇の作為性にこそ救われる。 [review][投票(7)]
★3シャーリーの転落人生(2009/日)巧みに物語が構築された立派な劇映画。でたらめ方言の面白さは『好色人生』より徹底されている。キイはやはり作中人物間で「触媒」のように働く福津屋兼蔵の造型だが、「笑い」の演出も『亀虫』以来の冴えだ。女優も皆よいが、ここで木村文を見たかったという思いもある。『』のようなカモメ飛行カットも。[投票]
★3シャーリーの好色人生(2008/日)シャーリー・テンプル・ジャポン』てこういう設定の話だったかしら……。冨永昌敬がジャンプカットなど意図的に連続性を無視したカッティングで驚きを生産するのに対し、佐藤央はきっちりとカッティング・イン・アクションを決めてくる。冷ややかな目が強い夏生さちがいい。寝ながらキックも面白い。[投票]
★4RED レッド(2010/米)ブラッシュアップの余地は大きいけれど、これでも面白がることはじゅうぶんできる。また、傑出した映画ではないからこそブルース・ウィリスの偉大さが痛感される。街中で拳銃を構えた姿勢がここまで絵になる俳優が古今東西どこにいるかしらと改めて惚れ惚れする。拳銃を構えるだけで金が取れるスターだ。 [review][投票(3)]
★4アパッチ(1954/米)アクション演出の濃密さはさすがに普通でない。バート・ランカスターが町をうろうろしたり岩山を駆け回っているだけで面白い。岩山の銃撃戦に続いてラストファイトが展開される場が畑の中、というのには意表を突かれると同時に作劇上それ以外にはありえないという納得感がもたらされ、完璧な空間選択だ。[投票(1)]
★4ザ・タウン(2010/米)スコセッシのギャングスタ映画でもあり『現金に体を張れ』でもありといったところに、高密度のアクション・シークェンスとレベッカ・ホールの存在が独自色を加えている。主演俳優としての自身にこの潔癖なキャラクタをあてがう演出家ベン・アフレックは厚かましいが、そのナルシシズムが却って頼もしい。 [review][投票(6)]
★3森崎書店の日々(2010/日)内藤剛志は胡散臭いものの、菊池亜希子の幼さを肯定できるなら応援もできる映画だ。撮影猪本雅三・美術松本知恵・編集菊井貴繁・音響菊池信之・衣装宮本まさ江など、近時は担当作が引きも切らない優秀なスタッフのそつない仕事ぶり。奥村知史の全力ダッシュのような微笑ましい細部がもっとあれば尚よい。[投票]
★4ゲゲゲの女房(2010/日)一見「枯れた」セピアの画面、その皮膜を一枚剥げば恐ろしく豊かな映画世界が広がっている。柄本佑宮崎将村上淳などいかにも鈴木卓爾が好みそうな被写体たちと宮藤官九郎さらには妖怪までもが完全に調和して平然と同居する。現代日本映画の最高級品。そして吹石一恵はあまりにも、あまりにも美しい。[投票(1)]
★3リトル・ランボーズ(2007/英=仏)各作中人物の顔面選択がぴったり嵌っていない。ゆえに表情はどうしても説明的な様相を帯びざるをえず、映画のエモーションに曇りが与えられてしまう。云い換えれば、キャラクタが演出家の駒に留まって、好き勝手に生きていない。子供らの頑張りは肯定したいが、子役の人材に関してはこれが英国の限界か。 [review][投票(3)]
★3その街のこども 劇場版(2010/日)過度の重苦しさを避けつつ生存者銘々の傷の形を顕した森山未來佐藤江梨子ともにいい。イーサン・ホークジュリー・デルピーにも劣らないとは云わないまでも、「街」の男女邂逅会話劇は立派に成立している。光線の劇的な変化を待てずに完結せざるを得ないのはつらいが、現地ロケの説得力はそれに勝る。[投票(1)]
★3名前のない女たち(2010/日)安井紀絵のいびつかつ真っ当な成長譚を「AV業界の裏側」「安井-渡辺真起子の母娘関係」「草野イニの異常心理」「安井-佐久間麻由の友情」といったラインが補強する。わけても友情物語の直球性に胸を掴まれる。いたたまれなくなる映画だが、平静な気持ちで見ることはできないという点で凡作ではない。[投票]
★3SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム(2010/日)前作よりも映画らしいルックと厳しい物語を持っているが、題材への誠実な取り組みゆえにコメディは破綻寸前だ。山田真歩らが輝いていた時代として回想する「文化祭ステージ」ですら傍から見れば「ダサい」という残酷。誰が彼女たちを笑えるのか。綱渡りのように危うい均衡で成立した「再開/再会」の映画。[投票(2)]
★3アブラクサスの祭(2010/日)冒頭のライヴ・シーンにおけるスネオヘアーの風貌と振舞い、あるいは演奏されている楽曲のサウンドやバンド編成を見ても、彼にカート・コバーンのイメージが投影されているのは明らかだろう。人一倍ノイズを感受してしまう繊細な魂の持ち主はギターを掻き鳴らしてノイズを撒き散らさねば生きられない。 [review][投票(1)]
★4フルタイム・キラー(2001/香港)確かに失敗作かもしれないが、とても魅力的な失敗作だ。また、反町隆史に非はない。「アンディ・ラウと配役を交換すればよかった」というような簡単なものでもないだろうが、「追われる王者の悲哀」を演じるにはこの反町は若すぎる(私はこれを『拳銃王』のグレゴリー・ペックを想いながら云っています)。 [review][投票]
★4完全なる報復(2009/米)「よくこんな酷いお話を思いつくよな。しかも映画にしちゃうとか」という慄きは『羊たちの沈黙』や『セブン』を初めて見たときのそれに近い(ちょっと大袈裟)。中盤以降はいよいよ荒唐無稽の度を深めてゆくが、それは観客を追い詰めすぎないための配慮、カート・ウィマーらしい品質管理だとも云える。 [review][投票(1)]
★3ハーモニー 心をつなぐ歌(2010/韓国)危機→解消の粗雑な作劇パターンとほぼ掟破りな終盤の急展開に韓国映画のなりふり構わぬ姿勢が露わだ。キム・ユンジンのフザケタ明朗や囚人と仲良しすぎる看守イ・ダヒが感動的との意見には同意するが、これではさすがに抑制を忘れすぎている。あらゆる感情を盛った映画は必ずしも観客の感情を動かさない。[投票]
★3デュー・デート 出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断(2010/米)夢語りから始めるのならば尚のことトラブルはもっと悪夢的であってほしいが、そもそもギャグと作劇に関する着想が数的に不足している。主演二名もこの企画に最良の配役だろうか。個人的にはランドール・ポスター印の選曲に乗せられるのにもそろそろ少し飽きを覚えてきたところだ。カースタントは及第点。 [review][投票]
★4クレイジーズ(2010/米)一九六四年に世界の終末を告げ知らせたヴェラ・リンの歌声は二〇一〇年ジョニー・キャッシュに引き継がれて映画は幕を開く。「また会いましょう」。個々の演出も手堅い。スモールタウン壊滅の絶望展開に夫婦の絆を彫り込むアメリカ映画の手捌き。川底の飛行機が『遊星よりの物体X』の氷中円盤を想わす。[投票(1)]
★3ストーン(2010/米)無益な演技合戦てのに胸焼けを覚えながら、執拗な切り返しのあまりの単調さに「これも狙いなのかしらん」と惑う。音楽が効率よく不安感を煽り立てるなど、作品全体はそれなりにデザインされているが。ミラ・ジョヴォヴィッチは全然ファム・ファタルらしくなく、しっかりと主婦風情。そこが新しいとも思ったり。[投票]
★4暗戦 デッド・エンド(1999/香港)アンディ・ラウの微笑の色気にケーオーさる。情緒豊かに全体と緩急をつけるヨーヨー・モンのシーンもいい。「自走自動車」「女装」など素敵アイデアの炸裂にも嬉しくなるが、作家自身の大傑作と比較すると爆発力はやや小さい。音楽もネックか。蒼の画面がジャン=ピエール・メルヴィルの血統を主張する。[投票]