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3819695さんのコメント: 更新順

★3ダイアナの選択(2007/米)露骨に作為を感じさせる美しさの画面は私の好みと完全に合致するものではないが、やはりパヴェル・エデルマンの造型するそれは多くの箇所で強く目を惹く。ロジャー・ディーキンスの『砂と霧の家』とは異なったルックも「露骨な映像美」という点では共通している。ヴァディム・パールマンの嗜好なのだろう。 [review][投票]
★3ファニー・ガール(1968/米)率直に云ってこのバーブラ・ストライサンドは嫌い。演出の趣味も極悪だ。特にストライサンドがオマー・シャリフに出逢う場面のストップモーションなんて。しかし美術には見応えがある。この種の映画は美術さえよければそれなりに成立するのだ。ジーン・キャラハン(とハリー・ストラドリング)の功績。[投票(1)]
★4消されたヘッドライン(2009/米=英)これは面白い。上出来のアクション映画。ファーストシーン、黒人男性が何者かから必死で逃げている。その彼の車道横断をワンカットで撮りあげる呼吸がすばらしい。特にスクーターと激突する演出は最高。頭からこういうカットを見せてくれるという一点だけをもっても、私は断然この映画の味方である。 [review][投票(2)]
★3ジーザス・クライスト・スーパースター(1973/米)ダサいなあ。七〇年代アメリカ映画が格好よくなるかダサくなるかは本当に紙一重なのだ。ダグラス・スローカムの画は悪くないがズームなどの処理が不味い。ジーザスの物語をロック・ミュージカルで語るという趣向にも特に惹かれない。が、見渡す限りの不毛の地で歌い踊る砂漠ミュージカルという点でこの映画は嬉しい。[投票]
★4チェイサー(2008/韓国)物語を転がす要因がもっぱら警察の無能さであるという点が作劇の稚拙さとして批判を集めるだろうし、またそれが現代韓国の社会批判として構想されたものだったにしても特に感心はしない。しかしとても面白い。観客が嫌悪感を抱くであろうこともものともしない、面白さに対してひたすら貪欲な姿勢に敬服する。が、しかし。 [review][投票(9)]
★3續姿三四郎(1945/日)冒頭の人力車の場面は無声喜劇の味わい。確かに黒澤は無声映画の監督経験を持たないという出自的な不利を負っているが、やはりそれらを見て育った世代には違いないのだ。藤田進の顔面力は正篇よりも向上。感情の零度を示した無表情がいい。河野秋武のようなキャラクタを登場させてしまうギリギリアウト感も背徳的に刺激的。[投票(1)]
★3害虫(2002/日)宮崎あおいが堪らん。というのはなるほどその通りだろう。いやいや蒼井優のほうこそが堪らんのですよ。この天性の垢抜けなさ! との説にも頷いておこう。だが私は、真に堪らんのはりょうである、と記すことにする。ともあれ塩田明彦は女優を撮ることができる。しかし映画は頭でっかちで惜しい。 [review][投票]
★2アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン(2009/仏)美的感覚の特異なことは認めるが、私のそれとはあまりに懸け離れている。中心的被写体と背景の視覚的な均衡を欠いた画作りが気持ち悪い、など。また「痛み」の映画であるなら暴力演出にはもっと鋭さがほしい。サイコキラーの造型が紋切型に収まるのも退屈。男優らはやたら半裸に剥かれる。つまり、そういう映画である。[投票(1)]
★5クローズ・アップ(1990/イラン)最強。こんな映画はアメリカにも日本にもフランスにも世界のどこにも存在しないということが、検閲の厳しさで知られるイラン映画の逆説的な自由と豊かさを示している。あるいはそれはイラン映画がどうこうではなく、キアロスタミの規格外の天才を証明するだけのものかもしれないが。 [review][投票(1)]
★4スター・トレック(2009/米)映画史を画期する独創的な「光」の造型。神話的強度の物語。俳優を除くほとんどすべてがコンピュータで拵えられた画面を全的に肯定することへの躊躇は残るが、スペクタクル創出に邁進するのみのエイブラムスにその葛藤はない。コメディ成分の乏しさは不満。その点アントン・イェルチンサイモン・ペッグが嬉しい。[投票]
★3愛と希望の街(1959/日)役者がつまらない。ヌーヴェルヴァーグにしてもネオレアリズモにしても、それはまず役者の魅力の提示法を更新するものとしてあったはずだ。その意味では望月優子や靴磨きの小母さんらがよい。道行く客に向かって発する「磨きませんか?」の声に滲む必死さ・卑屈さ・諦めほか諸々のニュアンスに戦慄する。 [review][投票(2)]
★4水の話(1961/仏)編集王ゴダール。刺激的なカットバックの映画――長閑な地上と不穏な空撮の。強迫的なパーカッションとクラシック/ジャズの旋律の。また、このスペクタクルな洪水の画面を撮るためにセットを建設するとしたらどれほどの費用がかかるか。実際の洪水をいいことにそれをロハでやってしまおうという見上げた活動屋根性。傑作。[投票]
★3巌窟の野獣(1939/英)ヒッチコックが表現主義期のウーファにルーツを持つ演出家であるという事実は軽視されすぎているのかもしれない。英国時代の作品には多く共通して云えることだが、ここでの禍々しい美術にも表現主義の感覚が息づいている。ジャマイカ・インの歪んだ外観。ほとんど九〇度に曲がった木。吹き荒れすぎの嵐。 [review][投票(1)]
★3ランド・オブ・ザ・デッド(2005/米=カナダ=仏)技術的に未熟なジョン・カーペンター映画。アクション演出に冴えがないのが致命的。「高層タワー」に画面的必然を与えられていないなど空間設計もおざなりだ。またデニス・ホッパーが類型的な支配者像を出ず物足りない。ゾンビを楔にしたアクション政治劇を期待していたのだが。ロバート・ジョイと「花火」の着想はよい。[投票(1)]
★3重力ピエロ(2009/日)「悪」と「暴力」を巡る「絆」の物語を法を超えたところで決着させるのならば、演出はもっともっと厳格であらねばならない。もはや私たちは『ミスティック・リバー』以後の世界に生きているのだから、という酷な云い方は慎むにしてもだ。云い換えれば、「いい話」の体裁を捏造する仕方に信用が置けない。 [review][投票(9)]
★4極楽特急(1932/米)主要スタッフにはルビッチ作にお馴染みの顔触れが並び、映画の出来に付け入る隙はない。ミリアム・ホプキンスはとてもチャーミングで、彼女とハーバート・マーシャルの泥棒合戦も最高に面白い。しかし私はいつもルビッチを楽しみきれない。その趣味の良さと仕立ての確かさが私の育ちの賎しさと折り合わない。[投票]
★4ひき逃げ(1966/日)まったくもって異形のルック。シネスコにもかかわらず黒白、というだけならまだ異常とは云えないにしても、唐突に挟み込まれる夢・妄想・フラッシュバックの狂気的な造型はなんだ。過剰に照明の操作された画面はSF映画の第三種接近遭遇シーンのよう。これが成瀬と高峰が辿り着いた地平なのか。 [review][投票(1)]
★3出逢い(1979/米)この主人公を演じるにはロバート・レッドフォードでは格好よすぎて悲哀不足。でも魅力的。馬と自動車のチェイス・シーンは「乗り物」つまりモノとしての馬の性能のよさを強調する演出だ。馬を「宣伝材料」としか見なさない企業に対する反発が物語の動機になっている点と考え合わせると興味深い。[投票(1)]
★4ヒストリー・オブ・バイオレンス(2005/米)クローネンバーグの『許されざる者』。このカナダ人監督によるカナダロケ映画が本質的に「アメリカ映画」であるのは製作会社の国籍の問題ではむろんなく、これが『捜索者』や『ミュンヘン』のように「家に帰ること」の映画だからだ。私たちは「家」に帰らねばならない。家族がそれを受け容れるかは二の次である。 [review][投票(3)]
★3満月の夜(1984/仏)このパスカル・オジェを好きになることは私には難しい。だがルイーズというキャラクタ、ひいてはこの映画がオジェなしに成立しないことは明白だ。ここでもロメールの配役術は恐ろしく的確。ファブリス・ルキーニはいつもながらいい顔だ。最終カットは第一カットの反復。捻れた円環として映画を締める抜かりのなさよ。[投票]