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愛のむきだし(2008/日) | 六〇分間のアヴァンタイトル! 西島隆弘はコメディ演技に天才的な冴えを見せ、奇抜な着想を支える演出のドライヴ感にも目を瞠る。しかし後半からの転調は支持しない。これは下劣なコメディであることと大真面目に愛を語ることの両立を貫いてこその映画ではなかったのか。ここに『紀子の食卓』的風景は不要だったはずだ。 [review] | [投票(4)] | |
突然炎のごとく(1962/仏) | 物語やキャラクタに納得できるか、などということ以前にカッティングの心地よさだけで見せられてしまう。「自転車」や「橋」といった映画的細部によって活力を与えられた画面と物語は実に瑞々しいが、それを行う手つきはきわめて巧みだ。「新しい波」とは当時において誰よりも古典を知る者たちの運動だった。 [review] | [投票] | |
それでも恋するバルセロナ(2008/スペイン=米) | 「いつものアレン映画」を現地調達スタッフで作ってみせる姿勢の真摯さ、安定した技術。ペネロペ・クルスならこれくらいやって当然。スカーレット・ヨハンソンは今ひとつ。というわけで私はレベッカ・ホールの一点買い。また過剰ナレーションこそがここでのアレンの野心だろう。いつでも野心的な勤労老人ウディ・アレン。 | [投票(3)] | |
極北のナヌーク(1922/米) | 最高の映画である。ではどのような映画として最高なのか。すなわち、ドキュメンタリ映画として。家族の映画として。プロフェッショナリズムの映画として。雪原と氷の映画として。地平線の映画として。乗り物の映画として。犬の映画として。聡明な演出に導かれた画面の連鎖が実に快い。 [review] | [投票(3)] | |
捨小船(1923/米) | キートン作品におけるカッティング・イン・アクション。キートンを「アクションの天才」と呼ぶとき、それはつまり「アクションをする/見せる天才」という二重の意味を帯びている。さらに、夢落ちと見せかけてその後にもうひとつ微笑ましい落ちをつける話芸の妙。キートンはシナリオ作家としても抜群に頭がよい。 | [投票] | |
ディア・ドクター(2009/日) | 怠惰な観客の私は笑福亭鶴瓶の出演作を追うことをまるでしてこなかったわけだが、いつの間にこれほどの俳優になっていたのか。たとえば『東京上空いらっしゃいませ』と比べても格段に巧くなっているのは確かだが、その顔面が醸す多義的に複雑な滋味ときたら! そう、ここでも問題はあくまでも「顔面」である。 [review] | [投票(2)] | |
勝利者(1957/日) | ナイトクラブも喫茶店もボクシングジムもバレエ教室も国籍不詳の抽象性を獲得して相変わらず日活の美術・照明はすばらしい。北原三枝のバレエ(なのか?)公演シーンは必要以上に長尺で物語の均衡を台無しにし、かつ幼稚なトリック撮影を無駄に駆使して最高に阿呆らしい。そこがよいのだ。 | [投票] | |
三悪人(1926/米) | スペクタクル。フォードのスペクタクルは「美術」のそれのように完全な人為のものではなく、必ず人智の及ばざるところを含んだ「風景」と「アクション」のそれとしてある。凄まじすぎる炎と硝煙。そして保安官ルー・テリジェンのあまりにもイーヴルな顔に戦慄し、三悪人のヒロイズムに涙する。 [review] | [投票] | |
ジンクス! あいつのツキをぶっとばせ!(1982/米) | 『ファミリー・プロット』にも似た掴みどころのなさ。ベット・ミドラーがコメディエンヌを務めきれていないのが辛い。ジャック・イーラムのシーン周辺に来てようやく腹から笑える。しかしトレーラー落下など見捨て難い演出・画面は少なくなく、シーゲル×ジグモンドの貴重な協働作としても大切にしたい。 | [投票] | |
糧なき土地(1933/スペイン) | ブニュエルがどのような意図を持ってこの映画を撮ったのか、などということを私は当然のごとく知る由もないのだから、ただ映画を見たままの印象を述べる。このドキュメンタリは相当の「演出」の介在をもって成立している。「傾斜」の効いた実に映画的なロケーションやカットの配列の仕方にもそれは窺える。 [review] | [投票(2)] | |
トランスフォーマー リベンジ(2009/米) | 「笑い」の演出はスピルバーグより長けている。争っているというより遊んでいるように見えるメカたち。アクション設計は家で小メカ群が暴れる序盤シーンが最良。シャイア・ラブーフも前半のほうがよい。主人公たる覚悟を決めてからは胡散臭い。「泣かせ」の演出は成立していない。ジェットファイアで泣けなくてどうする。 | [投票(1)] | |
ゴースト・オブ・マーズ(2001/米) | カーペンターの女性映画。母系社会という設定がすでに明示的だが、アイス・キューブやジェイソン・ステイサムといった間抜け面がメインキャストに名を列ねるのもこれが女性映画だからだ。ナターシャ・ヘンストリッジのヒロインぶりは申し分なく、クレア・デュヴァルも髪型のおかげで三割増し美人に見える。好っきゃ! [review] | [投票(2)] | |
ニセ札(2009/日) | めっちゃ下手糞。カメラワークにもカット割りにも間違いが多すぎる。そもそも村の「貧しさ」と「狭さ」を描けていないから物語は上滑りするばかりで犯罪喜劇が成り立たない。説明過剰で緊張感もまるでない。板倉俊之の回想なんて不要だろう。記念写真の使い方もなっていない。偽造工程を仔細に見せた点はよい。 | [投票(1)] | |
SR サイタマノラッパー(2008/日) | 苦く、痛く、切ない青春映画だ。だが確かに希望も感じさせる。それはとても「映画」にはなりえないような場所と人々で映画を撮ることの困難と誇りに重なるものでもあるだろう。低予算のHD作品であろうと照明はもっとがんばってほしい、などとも思う。しかしこのイックとトムを嫌いになれる観客などいるだろうか! [review] | [投票(5)] | |
ハッシュ!(2001/日) | 人と人の関係性の変化を丁寧に描きつつ、その変化の動因は強引に設定されている。たとえば、田辺誠一と高橋和也が付き合い始める描写は省略され、片岡礼子は「父親になれる目をしてたから云々」といいかげんな理由で田辺に接近する。あるいは秋野暢子らを招くことになるつぐみの行動。光石研の顛末。 [review] | [投票(3)] | |
魚影の群れ(1983/日) | 気象現象(雨・風)や発光体(発炎筒・花火)をもって画面に活力を与える仕方の見事さ。とりわけ緒形拳が十朱幸代を追いかけるシーンの雨と風の強弱! 佐藤浩市死にかけシーンからの「緒形のとっくりセーター」「佐藤の血液」「屋台の提灯」という「赤」の連鎖にもぞくぞくする。力に溢れた映画という意味で、力作。 | [投票(3)] | |
ターミネーター4(2009/米) | 不覚にも感動してしまった。たとえ馬鹿でかい殺人/捕獲機械と対峙する恐怖・絶望の大きさが『宇宙戦争』の八分の一以下でも、その志向の正しさは認められるべきだ。チェイス・シーンの「縦」のスペクタクル性が『キートンの大列車追跡』の一〇分の一に満たなくとも、そこにアイデアを詰め込む姿勢は評価されるべきだ。 [review] | [投票(7)] | |
不滅の熱球(1955/日) | またも池部良は(特に前半)何を考えているのかさっぱり分からない演技。そこがよい。監督に笠智衆の配役も慧眼だが、司葉子はもっと綺麗に撮らないといかん。戦争シーンの頑張りは偉いし嬉しい。幽体離脱な結末部の処理がお笑いに堕さないのは悲愴感の創出など演出家が映画の感情を掌握しているからだ。立派。 | [投票(1)] | |
レスラー(2008/米=仏) | 美しい映画。美しいダンスシーン。ミッキー・ロークがマリサ・トメイの前ではしゃいで見せるバーでのダンス。ロークとエヴァン・レイチェル・ウッドの廃ホールでのダンス。ロークはこの一作で自身のキャリアをすべて正当化してみせた。栄華も零落もすべては『レスラー』に至るための道だったのだと。 [review] | [投票(16)] | |
レネットとミラベル 四つの冒険(1987/仏) | 「映画」の必要十分。映画とはつまるところこれでよいのだという確信。世界最高峰の喜劇演出家ロメールの面目躍如たるのは意地悪ギャルソンとの攻防を描いた第二話、およびファブリス・ルキーニへの絶大な信頼を基に撮られた第四話だが、真に圧倒的なのはやはり第一話だ。この時間演出の濃密さはただごとではない。 | [投票(3)] |