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[コメント] 華氏911(2004/米)

いろいろ言われているが「このままでは本当にヤバイ」というマイケル・ムーアの真摯な危機感だけはホンモノだろう。そして、この映画を観た人は皆、自らの立ち居振る舞いが問われていることを自覚すべきだと思う。
緑雨

支配層・富裕層は支配を続けるために、富裕であり続けるために「戦争」を起こす。その「戦争」で犠牲になるのは支配層・富裕層に入ることのできなかった人々だ。これは別に今に始まった話ではなく、古来から人間社会ってのはずーっとそういうものだ。現代人である我々が問われているのは、その状況を少しでも改善するつもりがあるのかどうかってことだ。

☆「こんなの間違っている!」世の中を正すために徹底的に戦うか。

★支配層・富裕層におもねり、自分たちだけは犠牲とならないよう行動するか。

自分の場合、気持ち的にはもちろん前者(☆)。だけど、観客席という「安全な場所」からいくらムーアにエールを送ったって「戦っている」ことにはならない。本当の危機が訪れたとき、決定的な決断を迫られたとき、どのような振る舞いができるか?正直言って、後者(★)の行動をとってしまう誘惑に勝てる自信も無い。

そんな自分と違って、マイケル・ムーアという人間が「戦っている」のは明らか。逡巡しながら「長いものに巻かれ」気味に生きている自分は、彼の姿にある種の憧憬を抱かざるを得ない。その点で評価したい。

「恣意性の無い主張なんてありえない」というのは至極もっとも。その意味では、本作に恣意・暴論・事実誤認・情報操作が含まれているからといって「映画」としての評価を下げることは正しくないかもしれない。だが、この映画が世に出れば「ジャーナリズム」として受け止められることくらいムーアだって自覚していただろう。『ボウリング・フォー・コロンバイン』での功名を得た彼はもはや、一介の無名作家ではないのだから。そう考えれば、彼が巨大ジャーナリズムを攻撃するのと同様、本作の恣意性を批判する態度だって、あって然るべきだと思う。

それにしてもこれだけの力を持った反ブッシュ映画が存在し、それが世界規模で話題になっているというのに、現(2004年9月末)時点で大統領選の情勢は互角、むしろブッシュ優勢と伝えられていることをどのように捉えればいいのだろうか。

(1)ムーアの恣意性が冷静に否定されている。

(2)ムーアの主張は認めても、ケリーが大統領になったからといって解決はされないと判断されている。

(3)ムーアの言う通りブッシュがしょうもない奴であることはわかっちゃいるが、それでもブッシュが政権に居続ける方が得をする層が多数を占めている。

どれが正解なのかはわからないが、たとえブッシュが負けたしても、そう簡単に事態は変わらないだろう。問題はずっと根深いのだ。

(評価:★4)

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