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[コメント] プラトーン(1986/米=英)

私的オリバー・ストーン論総括。
町田

オリバー・ストーン程好き嫌いのハッキリ分かれる監督も珍しいと思う。

他国での評価は知らないが、少なくとも日本では淀川氏の酷評以降か?盲信的ともいえるバッシングが根強いようだ。

ともあれオリバー・ストーンのこの作品以降ベトナム映画が大量に製作されたことは周知の事実だ。

これを政府の検閲や圧制(赤狩り症候群の残り香)からの<勇気ある脱却・その第一歩>と讃えるのも間違いでないと思うし、作品そのものに備わった純然たる文学性・芸術性で勝負すべき<映画>に現実的な要素を付加することで安易な共感を引き興しそれを感動と錯覚させるという極めて狡猾な手段である、といえばその通りだと思う。

実は僕この映画が昔は大嫌いだった。シネスケに来るようになって改めて見直して他の多くのベトナム反戦ものと見比べてある結論に達した。

それはこの映画がダントツで面白い(単純明快という意味で)ということだ。

起伏のある展開、勇壮な演出、迫力あるシーンの数々・・・見てて飽きることが無い。例の有名シーンの衝撃は「ベトナム映画」であることで増幅されているとは云えマフィア映画に置き換えたって充分魅せられる出来であるハズだ。

さらに『Uターン』でのけにろんさんのコメントを読んでハッとした。やっぱりオリバー・ストーンは(アクション)映画監督としては確かな腕を持っているのだと。狡猾であると同時に敏腕なのだと。

思うにストーンはただ純粋に「ベトナム戦争」が撮りたかっただけなんじゃなかろうか。「反戦」なんか本気で考えていなかったんじゃなかろうか?すやすやさんのコメントにもあるが本当に生き生きとエネルギッシュにやたら<恰好良く>兵士達を、戦争を描いている。

では何故3点なのか。

僕もたかやまひろふみさんの「献辞が蛇足」と全く同意見だからある。僕はこれがこの映画の価値を台無しにしてると思っている。

これは本当は反戦主義者じゃない、ミリタリーオタク監督の言い訳だ*。この献辞が無いと映画は「反戦」どころか若者の「志願奨励」映画になってしまうからだ。

*集団における価値観の相違や摩擦を捉えた人間ドラマを「反戦映画」と定義するには無理がある。

7月4日に生まれて』もラストで失望したのだが、この人は「英雄の勝利を描いて娯楽ファンの共感(と金)を勝ち取る」ことと「人間の本質的な愚かさを告発しモラリストの指示を得る」ことという殆ど二律背反する行為*を、よくばりにも、一つの作品の上で両立させようとしているのだ。これは無茶だ。『ナチュラル・ボーン・キラーズ』も全く同じだ。あれも「社会風刺」をしたいのか「英雄賛美」したいのか曖昧だった。

*ダルトン・トランボの『ジョニーは戦場に行った』は優れた反戦映画だが、とても興行成績のトップに君臨するような映画ではない。

で、俺のオリバー・ストーン最終結論は「映画は面白いけど大嫌いな監督」となる。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (11 人)パピヨン ハム[*] Bunge tkcrows[*] けにろん[*] Myurakz[*] HW[*] ペペロンチーノ[*] FOX[*] たかやまひろふみ[*]

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