最低最悪の映画だと思っているわけではないので最低点をつけようとは思わないが、爽快な青春映画、誰もが楽しめる娯楽作であろうはずなのに、僕には全く面白くない。ひとつだけ魅力を感じたと言えば、沢尻エリカを抜擢したキャスティングセンスだけだ。

　「頭突き」という意味合いを持つタイトルが表すように、冒頭からケンカのシーンが耐えない。暴力シーンに拒絶反応を示すのではなく、繰り返されるケンカの描写があまりに落ち着きがなく展開されたことで、とても出来の良い暴力描写には思えない。

　在日朝鮮人という民族問題を扱い、毛沢東やキング牧師に言及する台詞を脚本に織り交ぜ、民族問題に関する意見を主張してはいるが、そういった主張にしてもあまりにストレートに言及しすぎ、説教染みているように思えてくる。

　「イムジン河」にクライマックスの大きな役割を担わせ、登場人物それぞれのエピソードを束ねていく終盤は、盛り上がりをとても正攻法に演出しているが、正攻法に立ち向かってしっかり感動させるほど映像に力を感じさせてはくれなかった。普段からあれだけ大きな発言をしている監督が正攻法に挑んでカタルシスを与えられないと思うと、「その程度なのですか？」と言いたくなってしまう。僕はこの映画で井筒が施した演出は「古い」と感じてしまうのだ。

　おそらく、僕が観客として映画に求めているものと、井筒が監督として映画で追求したいものは根本的に違うのである。井筒がテレビ番組で斬っていった映画への評価に僕が納得できない場合が多いことも、その辺の理由をよく表しているのであろう。