[コメント] ジンジャーとフレッド(1985/独=仏=伊)
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クリスマスのきわもの特番に出演する往年のタップダンスの大スター、ジンジャーとフレッド。話はそれだけ。フェリーニはそれで充分。
冒頭駅のシーン。列車が斜めに入ってくる。手前から乗客が画面奥に入っていく。オープニングはあまりに古典的な構図。雑踏。そこにジンジャー登場。カメラゆっくりパンしてる。そこで画面中央にどどーんとつり下がったポークが現れる。出たー!って感じ。フェリーニだー。次から次へと映し出されるイメージもう感動。
さて、このアヤシイクリスマス特番に集まってくる魑魅魍魎がもうたまんない。おっぱい星人フェリーニの本領発揮、18おっぱいのある乳ウシ。夢で見た男が現実に刑務所にいたというゲイ。もちろん小人の楽団、ダンサー。シリウスから来た宇宙人とつき合っている女(カレは地球人とどこが違うの?と聞かれて「わかってくれる」、なんてちょっといい答え)。死者の声マイクなしで録音するチャネラー。見つめただけで女性を妊娠させる黒魔術を習った男。もうヨレヨレの海軍大将。服役中のマフィアの若き大物。そっくりさん一行(プルースト、とか作家が多い)。食べられるパンティを発明した男。奇跡を起こす司教。超常現象研究の学者。インテリ。1週間TVを見ないですごしたオペラを歌う庶民のおばさん。テレビ特番が大喜びしような俗物ばかり集めた中に、我らが ジュリエッタ・マシーナとマルチェロ・マストロヤンニ。ジンジャーとフレッドであります。なんだか頭も薄くなったマストロヤンニ。NHK連ドラの宝田明か、これは。ならジュリエッタは中村メイコ?
この二人がすごくいい。いつまでもバカなこと言って「やんちゃ」なフレッドに対するジンジャーがいいですね。男と女。典型であります。 リハーサルといったって舞台裏のロッカールームみたいなところで衣装着替えて(なんだか恥ずかしいので別々に)ジンジャーが鏡を見ているとそこに映るフレッド、ポーズを決めて伊達男!
メイクルームでこんなインチキな連中とやるのがすっかり嫌になるジンジャー。帰ろうとするとTV会社の社長が来て若い時タップに夢中だった、てなこと言われて(リップサービスじゃない)一緒におどって気を取り直す。
舞台に出る前の静けさもいいなあ。本番前の舞台裏の感じが良く出ている。そしていよいよ波止場で別れのシ−ンを踊ろうとした時、停電になる。うまいですね、こういう流れ。ホテルで停電があってイメージの伏線はちゃんと張ってある。そんなことをすっかり忘れたころ、ちゃんと出てくる。暗くなった舞台の上で、ちょっとした告白。もう逃げようとしたところで電気が点く。この時の2人のポーズ。
最後は最初の駅で帰るジンジャーを見送れない(つらいから)といって別れるフレッド。なんでもないけどいい感じだ。ちゃんとサインもせがまれたし。
というわけで、もうお腹いっぱいであります。このサイトで他のコメンターの方々のコメントを読んでみると、私は話のスジはどうでもいい、という偏った見方をしているのが良くわかりました。こういう話らしい話のないのが大好きであります。
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