[コメント] フラガール(2006/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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その実直な作風は、もしかしたら映画化に当たっての「常磐ハワイアンセンター」への取材から導かれたものかも知れない。
単に温泉が出る(石炭の採掘には邪魔だったらしい)というだけなら、何もフラダンスでなくてもよかったろうに、なぜフラだったのか、そのあたりは良く分からないが、劇中のまどか先生の台詞にもあるように、プロのダンサーを呼んでショーをやるというのではなく、きちんと「音楽学校」というものを設立して一から学ぼうというような思想が始めにあったということが凄い。あまたある地域活性の失敗例に埋もれなかったのは、そういう真剣な姿勢とか熱意のようなものが開祖からあって、それが今日まで継続しているからのように思うのだ。岸部一徳や松雪泰子が演じたキャラクターは、そういう当事者たちの姿を端的に語っている。また、それに反対する者たち、冷ややかな態度をとるものたちも、それぞれの心情をきちんと代弁しているかのように演じているからコントラストの際立ち方が素晴らしい。
あくまで肩の凝らない娯楽作ということを前提に、きちんと嘘をつこう(ここの「日本人のフラ」のように)、ということがこの作品の作り手たちにはまずあって、それがすみずみまで共有されていたかのようなテンション(こういうのをケミストリーというんだそうです)。この作品のもっとも良かった点はそこにある。
まどか先生が東京に帰ろうとし、フラガールズが駅までおっかけてくる場面で、先生は「バカみたい、かっこ悪いからやめてよ」というのだが、この当時の日本人だったら、こういう「芝居的」状況が発生してしまった場合は、「素直に芝居にのる」のが自然だったように思う。この演出上の「照れ」は、何かちょっと違うような気がしたのだが、監督は私より10歳も若い人なのね。その代の人ならそうするか。しっかりした作り物を仕上げた監督なので年配の人かと思った。多少納得。
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