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[コメント] リトル・ミス・サンシャイン(2006/米)

「井の中の蛙」たちが「井の中の蛙」であることに気付き、それでも「井の中の蛙」でいいじゃないか、と思い至る物語。そして、じいちゃんがなかなかの曲者です。[Bunkamuraオーチャードホール (TIFF2006)/SRD]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







世間の評価も知らないまま、自分は成功できる、と信じ込んでいた父親。

色弱であることに気付かずに、パイロットになることしか考えていなかった息子。

そして、全米一のプルースト学者と自負しながら、スキャンダルですべてを失った伯父。

彼らは、それぞれに立場は違えども、周りが見えていなかったという点においては、みな等しく「井の中の蛙」であった。

この物語の中心人物であるオリーヴも、ある意味ではやはり「井の中の蛙」ということもできる。州の大会から(繰り上げ)出場しただけで、強豪たちが集うコンテスト本選で優勝できる実力などありはしなかったのだから。

しかし、オリーヴが他の「蛙」たちと違っていたところは、逃げずひるまず、自分のありのままにやり遂げ(ようとし)たことだ。自分の意志でコンテストに出場し、大好きな祖父が振付を考えた(上品とはいえない)ダンスを無邪気に踊ってみせる。

彼らが目指した「世界」からそもそも相手にされなかった家族たちに対し、オリーヴは堂々と自分なりのペースを貫く。慌てた「世界」(コンテスト主催者)は彼女を排除しようとする。望んだ形ではないかも知れないが、オリーヴは「世界」のほうを動かしたのだ。

家族はそこでやっと、このコンテストが、あるいは「井」の外のすべてが、みんな茶番であったことに気付く。オリーヴのおかげで、彼らは「井の中の蛙」としての誇りを取り戻すことができたのである。

…とまあ、小難しい考察を並べてみましたが、観ている間は何も考えずに楽しめる一作だと思います。息子・ドウェインが口をきかないでいる間の、メモ帳1枚1枚には笑ったな。

(評価:★4)

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