[コメント] ヘアスプレー(2007/米)
不幸な歴史の呪縛に起因する不誠実な出来事が描かれているにもかかわらず、一滴の涙すら許す悲観は存在しない。あるのは、思いと意志を、歌とダンスに託しひたすら邁進するポジティブな推進力。これは、ものの考え方としても、映画のありかたとしても正しい。
どのような時代であれ、どのような立場に置かれようが、人と人が関係を持たなければならない場が存在し、その関係に数や力の差が少しでも生じたとき、マイノリティに対する差別は必ず頭をもたげるものである。誤解を恐れずに書けば、人が人である限り差別は決してなくならないものなのだ。
だとしたら、「いつかは変わる。それはいつだかは判らない。でも、今から始めるのだ」というこの作品に込められた思いは、人が人である限り永遠に謳い続けられるべきメッセージなのだ。30年代だろうが、60年代だろうが、そして今であろうが。アメリカであろうが、アフリカであろうが、もちろん日本であろうが、それは同じことである。
そして、ひたすら、延々と、その思いが謳い続けられるためには、意志と姿勢が明るくポジティブであることは必然なのだ。
物量では敵うはずはないが、物語や歌曲の構成に『ウエストサイド物語』の影響が見られ、ミュージカル映画ファンとしては思わずニヤリとしてしまった。奇をてらわず、歌とダンスの楽しさを素直に積み重ねていくアダム・シャンクマン監督の演出は、60年代ハリウッドミュージカルの良き伝統をみごとに受け継いでいる。
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