駄作ではない。汚いロンドンの描きこみは秀逸であるし、ストーリーをテキストを読むように追えば、悪いわけではない。ただ、如何せん、トッドが殺人鬼へと変遷する心理描写を軽く見すぎている点や、「ロンドン１の理髪師」がパーカーを見知っている事を恐喝の台詞だけで説明するなど、必要な描写を相当程度抜かしている印象が強い。

そのため話の重さの割に淡々と進んでしまう。トッドがタービン判事を仕留めるシーンや最後にトビーがトッドを手にかけるシーンなどもう少し感情的に揺さぶってくれても良さそうなものであるのに、平板なまま終わってしまった。ジョアナの駆け落ちも、二人が馬車に乗ってフリート街を離れるシーンをラストにいれるとかはっきりさせてくれても良かったのではないか。この点では本作はあくまでもジョニー・デップの映画なんだなと認識させられた。

全体を通して、相当もったいなかったと言うのが正直な感想である。