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[コメント] アメリカン・ギャングスター(2007/米)

クライマックスの演出は手本のよう。銃撃戦の冴えもさすがなら、男がまことカッコウ良く撮れている。また、その前に差し挟まれたそれぞれの家族描写など肉付けもそつがない。だがしかし、最近のリドリー先生にゃどうも心が無い気がする……。
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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何が正しくて何が悪いんだかわかりゃしない世の中で、それぞれ自分だけの流儀を持って戦う男たち。どちらも自分以外の何かのために手を汚し、危険に身を置いているはずなのに、いつしか私生活はしっちゃかめっちゃかだ。母ちゃんにビンタ喰らうフランクにゃ泣けたし、親権を放棄するリッチーにゃグッときた。それでも戦い続け、ついに捕え、フランクと面と向き合うリッチー。一つの黒社会のドンたる凄みを利かせ、相応の大儀をかざし鬼気迫る脅しをかけてきたフランクを、最後にやりこんだリッチーの台詞にゃ痺れた。

ただ、その後のフランクの変節は、フィクションとして見ると、個人的にはあんまり好ましいと思えなかった。男VS男、ヤクザVS刑事は、最後はお互い相容れることなく終わって欲しいのだ。シンパシーはあったとしても、決してともには生きていけぬ……で終わって欲しいのだ。実話元にしたんだから仕方ないんだろうけど、フランクがリッチーに屈し、二人の均衡が崩れてしまったのが残念だった。また、前半から、リッチーはフランクを見続けるが、フランクはリッチーに意識を向けていないのが、男VS男もの(なんだ、そのジャンル……)としては欠陥と思えた。

或いは、我々はすでに『フレンチ・コネクション』や『セルピコ』を知っている。あのヒリヒリするような孤独感は、この映画には無かった。それは、まだしも『ゾディアック』にはあったかも知れぬ。そして、キャラクターや人物関係が残す余韻については、この映画よりももっとかったるい『ディパーテッド』の方が、つまるところスコセッシの方が勝っているように思う。

(評価:★4)

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