[コメント] アフタースクール(2008/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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早くも次回作への期待が高まるばかりではあるのですが、実はついさっき観た映画なのにも関わらず、心地よい余韻というのはあんまりなかったりする。
というのも、内田映画としてはすごく面白かったのだけれど、私が劇場で初めて出会った神野や木村たちの物語としては、やや食い足りない感じがしたのだ。この映画は『アフタースクール』というタイトルが示すとおり、「大人になった同級生たち」についての物語である。登場人物はそのように配置されているし、彼らはそのように動いている。視線のコントロールが凝っているから複雑な物語に見えるけれど、人物の行動はいたって自然かつ情熱的で、不自然なことをしている人はひとりもいない。これが内田映画のすごさなのだけれど、今作に限っては映画そのものがギミックに傾倒しすぎるあまり、彼らのドラマを語り尽くすには至っていないように感じた。「見せ方」に比重を置いた分、「見せるべきドラマ」がほとんどプロットだけで進行してしまい、感情移入する前に映画が終わってしまった感じなのだ。
個人的な趣味趣向の問題なのだけれど、私は映画を物語表現の一ジャンルとして楽しみたいと考えていて、ギミックやカメラや編集や音楽はあくまで物語を伝えるための付帯要素だと思っている(もちろん異論はあると思う)。そういう趣味の人間からすると、本作はギミックが物語を引っ張り上げているような感じで、1本の映画作品としてややバランスを失した状態だったと思う。頭フル回転もいいけど、あと30分長くていいから、「泣けるわ〜、同級生っていいわ〜」という情感が染み入るような時間帯も、もっともっと長くとってほしかった。100分強という上映時間がマーケティングによる縛りだったとしたら、本当にもったいないと思う。
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内田けんじ監督はたぶん、まだまだ底を見せていない。この人なら、2時間半だろうが3時間だろうが、隙間なくエンターテイメントを詰め込んだ高密度のオリジナル作品をつくれるんじゃないだろうか。前作のレビューで私は「宝くじが当たったら内田けんじに半分あげたい」と書いたけれど、もうそんな規模でどうにかなる人ではなくなってしまった。今後、お金を握っているえらい人たちの英断を期待したいと思います。
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