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[コメント] クライマーズ・ハイ(2008/日)

鑑賞後の一言 「NHKドラマ版に及ばず」
ぐ〜たらだんな

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







1970年頃までに生まれた誰もが、それぞれの思いと共に記憶する未曾有の航空機事故。その事故の大波に飲み込まれ翻弄された地方新聞社。ダイナミックな展開、そして迫真の群像劇。恐らくこの映画だけを観ていれば星5つだったろう。しかし3年前に制作されたNHKドラマ版の重厚な仕上がりには及ばなかった。

横山秀夫の原作には、墜落場所がまだ確認されていない段階での新聞記事タイトルに「長野・群馬県境」「群馬・長野県境」のどちらを使うか、全権デスク・悠木(映画版は堤真一・NHKドラマ版は佐藤浩市)が判断に迷うシーンがある。群馬の新聞社なのだから群馬が先のタイトルが当然のこの場面で、悠木は長野が先を選択してしまう。「圧力隔壁原因説」をスクープ出来なかった伏線となるこの重要なシーンを、NHKドラマ版は丹念に描き、映画版は省略した。悠木がスクープを逃したのは「チェック・ダブルチェック」を重要視していたからではない。下りることも、下りないことも出来ない中途半端な生き方をしていたからだ。その象徴として衝立岩のエピソードが随所に挿入されているのだが、映画版はその意味を消化し切れていなかった。

横山秀夫は本作品の映像化にあたり、固有名詞をそのまま使用することにこだわったという。ストーリーの大幅な変更も許諾しなかったのだろう。NHKドラマ版と映画版は瓜二つの構成、時間も148分と145分でほぼ同じ。しかし人物の内面を抉り出す鋭さはNHKドラマ版の方が上。わざわざ映画化した意義が見出せなかった。星4つ。

(評価:★4)

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