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[コメント] 3時10分、決断のとき(2007/米)

うーん、なるほどね、いい映画だね。心情映画って気恥ずかしい表現だけれど、登場人物の心根が、吐く息の白さのように鮮明に伝わってくる、要するに浪花節映画でもあります。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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家庭の中で居場所のないオヤジ。妻からは足蹴に扱われ、二人の息子たちからも十分見捨てられている。父親は責任を負わされてはいるが、解決に導く存在であることは全く期待されていない。これって、どこにでもある現代家族の情景でもある、ことに気付きます。そう、僕たちの姿ではないだろうか、、。

リメイクとは知らなかったけれど、こんな完全西部劇って最近見た覚えがないことに気づく。親が子供のために自ら命を投げ売ってでも見せたいものって、、。こういうところが浪花節なんだけど、でも、それがラストのラストで、こちとらの瞼にジンわり来ちゃいます。分かってはいるけれど、浄化の涙を流します。

この映画の面白い部分、実は2つあります。

1つは、金のために町の住人が犯人をガードする人たちを攻撃する部分です。ここは映画的には淡々とした展開が逆流する部分で、動的で構成的にも秀逸だ。映画的に高揚するエモーション部分であり、うまい。

2つはあまり目立たないが、弟分の超悪役ベン・フォスターの配置である。最初から目つきが怪しい演技で、変質的な怖さをぷんぷん臭わせる。頭領への異常な服従ぶりで目立つ。ラスト、頭領がどこからでも逃げられるのに変に列車に乗ろうとするのを忠実に妨げようとする哀れさ。

拳銃をぶっ放しながらも頭領の変な動きに惑いながら「ボス、〜してください」というセリフに彼の心情が伝わってくる。頭領を助けたつもりでクリスチャン・ベールを弾丸を放つが、喜んでもらえると思うもつかの間撃ち殺されるその哀しいそして思いがけないと言わんばかりの、その形相。

こんな盗賊団でも一応家族のつながりはあったということなのだろう。光るシーンだ。いいね。

この映画、全体を通して全く無駄がない。脚本にもよく練られている。これぞ秀作というべきだろう。

ラッセル・クロウは役者冥利に尽きるいい役柄。それに十分応えている重厚な演技。対するクリスチャン・ベールはいい役なのに、線が細いというべきか、映画のいいところをほかの役者に取られてしまう傾向あり。今回も熱演しているが、、。

この映画を見て僕は思う。最近、映像なり、音響なり、CGなりいわゆるテクなものに僕たちが慣れ過ぎてはいないだろうか。 いい脚本、いい演出、いい俳優この3つだけで映画は十分秀作となり得るのである。そんな、基本中の基本という映画作品であると思う。

みんなに見てもらいたいなあ。でも、何でこの映画、ミニシアター系上映なの?

(評価:★5)

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