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[コメント] トゥルー・グリット(2010/米)

傑作。全くコーエンらしい死体の映画。それが実に要所で効いている。父親の棺。縛り首の3人、主人公はその死体と同宿する。木の高い枝に吊るされた死体。夜の小屋の銃撃戦で死んだ遺体の処置。4対1の決闘に敗れた死体。そしてコグバーンの棺。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 本作の構成上、多分最も印象に残る死体は木に吊るされている死体だと思う。こゝからプロットが死臭のする方向へ転がり始めるのだから。(実はその前の、ロバを虐待するネイティブの子供2人の扱いも重要だと思うが。)しかし、コーエン兄弟の死体への偏愛(?)を最も感じるのは、何と言ってもコグバーンが毒蛇に咬まれたマティを医者へ運ぶシーンで、鞍上から見たショットとしてペッパー達の死体をイチイチ見せるところだ。こういうところで感動する。もともとこの悪役達も出番は少ないながら単純な記号的な卑劣漢には描かれていないのだが、その死にまで敬意が表されていると云うと言い過ぎかも知れないが、とにかく演出家の心配り(というか偏執)に感動してしまう。これは単に一例であって、こういう細かな演出が積算されて、ともすれば西部劇としてはありきたりと思われそうなプロットが実に細部の豊かな見所の多い作品に構築されているのだ。

 エピローグも実にいい。冒頭のマティの父親の棺はラストでコグバーンの棺とシンクロし、さらに云えば、コグバーンの隻眼とマティの隻腕がシンクロする。コグバーンとマティの関係は父娘であり、また、それ以上の同士(男女)としての関係が象徴的に示唆される。墓所で終わる、それがロングショットである、というジャンルに対する慎みも心に残る。静かな感動がいつまでも去らない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (9 人)袋のうさぎ おーい粗茶[*] jollyjoker 3819695[*] tkcrows[*] けにろん[*] ぐるぐる[*] 緑雨[*] ぽんしゅう[*]

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