[コメント] TENET テネット(2020/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
普通に進む映像の中に、巻き戻し映像が差し挟まれる。一瞬、「えっ?!」と思う。でも、だから何?という程度のインパクトしかない。次は、明らかな巻き戻し映像が、順送り映像と並行して見える。繋ぎ目というか境い目がよく分からない。「ええっ?!」と思う。でも、だから何だよ、としか思えない。後半になると、基本、というか、背景は巻き戻し映像なのに、手前の人間たちは順送りで動いている(としか見えない)。「えええぇぇっ?!」と思う。それでも、で、何な訳?という程度のインパクトしかやっぱりない。
例えば、ビルが爆破されて粉々になる映像が巻き戻される。散在した破片が、スーッと宙を飛んで行って、一つのビルを形成する。次の瞬間、それがさらに別の形で爆破される。現実のビルは1回しか爆破できないから、この映像、どうして撮ったのだろう?とは思う。でも、それが分かったところでどうでもいいや、という程度の興味しか湧かないインパクトなのである。
巻き戻し映像の面白さ、というものはある。この映像的な面白さに、真っ向から挑んでいる。この姿勢そのものは嬉しい。やりきっているところも凄いと思う。でも、正直に言えば、映像的なインパクトは、チャップリンの『給料日』(だったかな?)のレンガ詰みのシーンのインパクトと大差ない。というか、チャップリンの方が、よりシンプルなだけに、よりインパクトが大きいと言えるのではないか? だとしたら、ここまで手の込んだ映像を造る意義はなんなのか。
やってることは凄かった。本当にご苦労様でしたと思う。しかし、映画を観終えた素直な感想が「ご苦労様」だというのは、あまり面白い映画だったとは言えないのではなかろうか。
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ストーリーについて。僕の理解したところでは。遠い未来に、人類を破滅に導くとんでもない兵器を開発した科学者がいたと。彼か彼女は、なぜか良心が働いたみたいで、その兵器を10個ぐらいに分解して、タイムマシンか何か(時空移転装置みたいな?)で、過去にそれらを送り込んだ上、自分は自殺したと。人類の破滅を避けるためといった意味みたいだ。ところが、この2019年頃に生きる、オリガルヒ(ロシアの新興財閥)のケネス・ブラナーが、どういうわけだかあと一つを残してすべて手に入れることに成功したと。基本的には、この最後の一つを巡って物語は展開する。ところで、このオリガルヒが変わっていたことには、その能力を世界征服に使うとかいうのでなく、自身も末期の膵臓がんを患っているために、世界を道連れに破滅へ導こうとしていたのだと。これを阻止するために、未来世界から治安警察みたいのが送り込まれてきて、時空の逆転を都合よく(あ!言っちゃった)利用しながら、オリガルヒの私設軍と暗闘するという。この未来の警察部隊は、現代社会に生きる一人の名もなき男を捜索班のリーダーとして見出だした。この男が、実は未来でこの部隊の創設者だったと分かり、ここに物語は壮大な円環を閉じることになる。まあ、言ってみりゃ、悪の総統が世界征服を企むてえのと同じレベルの雄壮で聡明なストーリーではある。もっと単純で良かったんじゃないか。
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「どうってことない」を逆さまに記したら、少しはインパクトのあるコメントになるかと思ったが、結局どうってことないコメントにしかならず。イサナンメゴ。いや、ゴメンナサイ。
75/100(20/9/20見)
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