[コメント] 青春の殺人者(1976/日)
関西が舞台の原作を、背景を成田とすることで物語の時代色を濃厚にしている。マッチョな元ヤンが主人公である原作を、ナイーヴな文化系青年を主役とすることで試行錯誤の煩悶を大きくしている。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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原作では一度で(しかもあっけなく)殺してしまう両親を、順番にねばっこく殺させることで、それぞれとの関係性を肥大化させてもいる。
虚飾や傲岸、征服と服従の関係性を抜きには語れない「彼らの今まで」が拡大解釈されていて、つまり、自らが抱える欲求不満の全てが凝縮されてしまったかのような母の濃厚な情念や、強引で気まぐれで一方的な父の愛情の押し付けが、それにがんじがらめにされてきた主人公の鬱屈とともにより強く伝わってくる。
たったあれだけの短編を、よくもまぁ、ここまでエンタメ要素たっぷりに映像化したものだ。ここまで徹底的にしてくれればもはや感動しきりだ。『十九歳の地図』も、いっそのことこのぐらい変えたり解釈を加えたりしちゃえばよかったんだよ、柳町光男。時代への迎合ではなくあえての主張であったならば、根底に流れるものに違和がなかったならば、それはそれで普遍的な作品として受けとることができるんだよ。そう、この映画のように。
などとは思いつつ。
この映画が行った「原作の翻案」を何よりも確かに素晴らしいものに導いたのは、原作よりもよっぽど「蛇淫」であったり「聖母」であったりな、原田美枝子の存在であったような気がしてならなかったりもする。
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