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[コメント] シザーハンズ(1990/米)

どちらが幸せだったのだろうか。
ダリア

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ずっと博士と二人きり、博士が亡くなってからは独り、城で暮らしていたエドワード。

もしもペグが彼を連れ出さなければそのまま何も知らずに独りで永遠に過ごしていたであろう彼と、人間社会へ飛び出した後の彼。どちらが彼にとって幸せだったのかと延々考え込んでしまった。

エドワードは人間社会で友情を、異性への愛を知った。そして、憎しみや哀しみ、愛する人を抱きしめられない葛藤も。

キムとは結ばれることなく、彼は元の世界へ帰って行った。しかし、彼は以前の、何も知らなかった頃の彼ではない。あらゆる感情を抱えたまま、彼は永遠に生き続けなければならないのだ。そう、永遠に。気の遠くなるほど、残酷なほど長い時間を。キムへの想いも、彼が受けたあらゆる仕打ちも、永遠に忘れることすら出来ずに、たった独りで。時折窓の外を眺めては、あのキスを、あの雪を思い出しながら。

キムは何故全てを捨ててエドワードの元へ飛び込まなかったのかと考えた。

愛する男に抱きしめられた瞬間に息を引き取ることになっても、彼女にとっては本望だろう。至福の絶頂で、彼の腕の中で死ねるのだから。

でも、そうすると残された男は?

愛する女性を自らの手で殺してしまったという罪の意識に苦しみながら、永遠に苦しみ続けなければならないのだ。また触れることさえ叶わずに自分の寿命が尽きるまで傍にいることを強いるのも、彼には残酷なことなのかもしれない。愛する人とは、触れ合いたいと思うのは当然なのだから。

そうしてキムは身を引いた。彼女もまた、城で暮らすエドワードに逢いに行くことも叶わずに、長い長い一生を過ごしていくのだ。時に眠れぬ夜を過ごしながら。雪が降るたび彼を想いながら。

何も知らないエドワードと、人間としてのあらゆる感情を知ってしまったエドワード。どちらが彼にとって、幸せだったのだろうか。その答えは、永遠に判らない。

(評価:★4)

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