[コメント] 許されざる者(1992/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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復讐をテーマにした活劇。
マカロニ・ウェスタンは(未だ)良く知らないが、東映仁侠映画や、最近の『キル・ビル』なんかとの共通点は無数にある。
古代ギリシアの三大悲劇作家、その筆頭に数えられるアイスキュロスは、復讐者の復讐される宿命を『アガメムノン』王の物語の中に描き出し、ギリシア悲劇を創設者となった。
日本には、仁侠映画の大元にもなったご存知『忠臣蔵』がある。仇討ちは、世間からは歓迎を以って迎えられるが、法的には禁令、つまりアウトで、本懐を遂げた浪士は殺人者として処刑される。だから高倉健にしても、鶴田浩二にしても実に何度も「法」に復讐」されている。
この物語の主人公マニーはラストだけ観れば、何の復讐も受けていない。しかし、娼婦を切り裂いた男を射殺した自分の身代わりに、唯一の親友ネッドを磔にされている。これは十分な復讐を受けたといえる。その町の「法律」である保安官リトル・ビルの手痛い復讐を受けたのだ。そして彼は怒り、酒を煽る。単身、酒場へ乗り込んで、情け容赦無く5人殺す。彼は再び、残酷な殺人者として町を、そして故郷を追われ、息子達といずこかへ消え去る。息子達が成長したとき、再び、大きな復讐を受けることが約束されている。しかし、彼にとって何より応えたのは、最愛の妻を奪い去った、神からの復讐であり続けるだろう。ある意味ではもう彼は、死人、であるのかも知れない。物語のはじめっから。
この映画の最も素晴らしいところは、大西部の歴史に於いては取るに足らないような小事件を描くのに、二時間十分という長尺を費やしながら、ホンの一秒も退屈させない、ってトコにある。ケビン・コスナーのナンチャッテワープなんていう映画とは大違いである。
それも、マニー、リトル・ビルは勿論、ネッドやスコフィールド・キッド、リチャード・ハリスが演じたイングリッシュ・ボブや、その伝記作家などが、其々二面性を備えた憎みきれない、魅力的な人物として描かれているからに他ならない。
とくに、ジーン・ハックマンとイングリッシュ・ボブ、伝記作家が留置場で絡むシーンは本筋とは直接的には何の関係もないにも拘らず非常な緊張感に充ちていた。というか、俺にはあのシーンが一番、面白かった。
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