[コメント] 時計じかけのオレンジ(1971/英)
映画を見終った人むけのレビューです。
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一般的には喜びの唄と称されても良い「雨に唄えば」をレイプシーンで使った時点で、この作品の意図は90%伝わったと言っても過言じゃないと思う。これ程の悪意に満ちた発想はキューブリック以外には考えつかないだろう。以前、僕に彼女が出来た時、「雨に歌えば」を心の中で唄って自分を祝福した事がある。それは本当に心から嬉しかったのだ。そんな人生ばら色の時に唄う僕の大好きな曲を、キューブリックは、キユーブリックは・・・、踏みにじりやがって・・・!
でも、そんなキューブリックが、大、大、大、大、大、大、大、大、大好きだ〜っ!!!
ごほん・・・。自分の感情ばかりを語っていても能が無いので、”雨に唄えば”が本作に挿入された経緯もレビューします。そもそもは、リハーサルの際にキューブリックが「君の知っている歌を歌ってみたまえ」と、マルコム・マクドウェルに言ったのがキッカケだそうです。そこでマクドウェルはジーン・ケリーの”雨に唄えば”を歌ってしまいました。あまりにもレイプ場面とは正反対の歌に衝撃を覚えたキューブリックは三日間ぶっ通しで歌わせるかどうか考えたらしいです。
実はキューブリックはチェスの名人と言うのはご存知でしょうか。彼は一手を考える事にゲームの消費時間の半分以上をそそぎこむのだそうです。その一手を間違えるとゲーム自体がガタガタになるので彼は注意深く真剣に打つ。映画も同じだとキューブリックは断言しています。そんな彼が”雨に唄えば”を考えに考えた末、歌わせる事を決定したのです。きっと緻密な計算の元に挿入したのでしょう。
彼のお得意の”狂気”も、計算を重ねた末の理論的なものであろうと僕は思います。完璧主義者の映画創りは論理的思考が成せる技なのです。
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