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[コメント] トゥルーマン・ショー(1998/米)

なんて残酷な彼の運命。それを受け入れないことには生きていけなかったということなのかと、とてもイヤな気分になる。それでも、
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







子どもや孫どころか伴侶さえなく、本当に彼の成長だけを喜びの糧として生きていた人も多いのだろうなぁ。とも想像する。

ほんのわずかではあるが米国で暮らしていた頃、毎週通っていた(通わされていた、と言った方が正しい)場所に老人ホームがあった。そこで知りあった老女たちの部屋で見せられたものの一つに、アジアやアフリカの少年少女たちの写真があった。彼らは彼女たちの養子ということになっていて、金銭的援助を受ける代わりに手紙や写真を送ってくれるとのことだった。もう成人して結婚した「子ども」もたくさんいて、「実際に会ったことは数えるほどしかないけれど大切な家族なのよ。彼らは私の家族なの。ほら、これが彼のお嫁さん。見て、孫までいるのよ。」と、彼女たちはそれは愛おしそうに次々と写真を見せてくれた。いわゆる(*1)フォスターペアレントのようなものだ。けれど、だからと言って「ただの慈善事業自慢かよ。」などと片付けてしまってはならない。それは彼女たちにとって、唯一の「生きている」家族であるのだから。

このテレビ番組とそれとは決して同じものではない、ということはちゃんとわかっている。トゥルーマンは確かに母親に捨てられてしまった子ではあるけれど、生きていくためにあえてテレビに出ることを選んだわけではないし、第一、その企画自体を知らされてはいなかった。プライバシーのない、何もかもが捏造された世界で、端的に言えば「飼われて」いた。視聴者も、スポンサーを通じて間接的に彼を養ってはいるが、その多くは決して愛情や善意のみからではなかった。

それでも、彼の写真付きのクッションを抱きしめて彼を見守る老女ふたりを思うと、トゥルーマンのかなしいこれまでは決して無駄ではないのだろうな。とも思えてしょうがない。

本当に馬鹿げた、彼の人間性を剥奪した人を愚弄しきった企画ではあるけれど、それでも、本気で彼を愛していた人はたくさんいただろう。もしかしたら病院のベッドからとてもさびしい離島から絶望的な孤独の中から、彼の明るい笑顔をながめることだけを楽しみに生きていた人もいるかもしれない。何よりも、彼のことを捨てた母親こそが、番組の最も熱心な視聴者であったかもしれない。あの、目の印象的な彼女がすがるように画面を見つめていたように。

また、何もかもを知った今の彼だからこそ、その現実に耐えて立ち向かって最後には自らの力でそれを抜け出した彼だからこそ、そんな彼にしかできないことがきっとあるに違いない。と、私は彼の(本当は崩れてしまいそうなギリギリのところに立地しているだろう)強靱さをまぶしく思いつつ考える。

とんでもなく切ないものではあるけれど、それでも最後にあんな笑顔で挨拶できた彼のことだ。大丈夫。その強さをわかってくれる人は世界中にたくさんいる、そしてその強さや明るさを分けてもらいたい人もたくさんいる。今まで以上に勇気づけられたり励まされたり自分のダメさ加減と向き合うきっかけをもらう人たちも、アナタのことを忘れたり馬鹿にしたりする人たちと同様に、いや、それ以上にいるかもしれない。と、私は思うし信じている。

でも、放映日ジャストに生まれたということで採用になったトゥルーマン以外の赤ちゃんたち。の行方がさらっと流されてしまったことについてはどうもまだ心残りだ。彼らはどこでどんなふうに育てられ、そして今、どこで何をしているのだ? プロデューサーよ、それについての納得のいく説明も、ちゃんと視聴者にしておくれ。

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(*1)

フォスターチルドレンは決して家族のいない子どもだけを対象としているものでもないし、参加している人も決して孤独な人ばかりというわけではありませんですよ。念のため。

(評価:★4)

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