[コメント] ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒(1999/日)
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そもそも渋谷のシーンはその後のストーリーには結びつかず、とりあえずマニアの皆さんの喜びそうなものを作ってみました、という域を出ていない。
巫女だの政府の要人とかの登場は位置づけが曖昧だし、興を削ぐだけである。ガメラにイリスから救出されてやっぱり私が悪かった、なんてそんなヌルい結末で納得できるか!
ここはガメラに憎しみを持つ綾奈とガメラのガチンコ勝負に徹するべきだろう。 綾奈を筆頭に渋谷での被害者の遺族の憎しみを吸収して、強大となったイリス。その憎悪パワーは強大だ。京都を舞台にガメラとの激闘が繰り広げられる。そしてまたしても多くの罪のない人々が巻き込まれ、ひどい死に方をする。 ほぼ相打ちの状況で辛くもイリスの胎内から綾奈を引っ張り出すガメラ。しかしそれでも綾奈は改心しない。そこに浅黄がやってきて綾奈を「バカ!」と平手打ち。「これがあなたのやってきたことよ!」と指差す先には被災者の群れ。母親の死体を呆然と見守る子供、両手両足を切断された人は「こ、殺してくれ〜」とうめく、恐怖で頭がおかしくなった人もいる。さながら『沖縄決戦』状態。さすがに綾奈もがっくり。いや、それでも非を認めないかもしれない。ガメラがいなければこんなことにはならなかったとか言って。愛する両親を殺された憎しみというのはそこまで強いかも知れん。いずれにしても渋谷のシーンを創造した以上、ここまで腹を括らんとなあ。
もちもんこの復讐の連鎖に明快な答えは出ないだろう。ガメラの立場で言えば、「地球全体のこと考えれば、渋谷の一万人の犠牲は想定内」だろう。しかし被害にあった人々はたまったものではないだろう。どちらも正しい、とすら言える。正しいからどちらも譲らないだろう。ことほど左様に「赦す」とは大変なことである。憎しみと赦しの意識が渦巻く中、ギャオスの群れが襲撃、あらゆる思いが渾然となったところで終幕、となったらこれは相当なものと思ったのだが。
三作を通して興味深いのは、ガメラの敵は皆、母親だったということだ。ギャオス(単性生殖)、レギオン(お腹に子レギオンを大量に抱える)、イリス(綾奈に寄生して彼女を胎児のようにする、また腹部に巨大な女性性器に似た器官を持つ)、綾奈がイリスに吸い込まれるシーンは、小学生低学年くらいであれを見たらトラウマ必至だろう。対するガメラは男性の謂いであり、特にこのシリーズでは、射精をイメージした「プラズマ火球」でさらに明快になっている。ガメラは3作を通して、母性原理に対して単身勝ち目の薄い戦いをしてきたわけで(1作目も2作目も、目の前の敵をとりあえず倒しただけで、状況はどんどん悪化していく)、それが何を意味するのか、何らかのコンプレックスに起因するのではないかとも思うが、正直よく分からない。
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