[コメント] ボーイズ・ドント・クライ(1999/米)
とにかくこの映画は「夜」のシーンが美しい。それも現在のアメリカの田舎の「普通」の夜。なんでもない普通、何もない普通、何もなく夢もなく息苦しい普通。しかしその普通の夜がとても「リアル」で美しい。
私も日本だが田舎に行くとコンビニでこの様な感覚に襲われる。
きらびやかな夢に溢れたニューヨークやおしゃれな黄色い光のパリや孤独な感じはするけど人の多い新宿とは違う、「息苦しい」感覚。
人がいなくて空気はおいしいが「どこにも行けない」閉塞感。この息苦しい感覚は「現実」という名で蛍光灯の光のなかで自分の心に入ってくる。
こんなに現実的な「夜」の多い映画は初めてだ。
この映画の最初の印象はそうだった。
この作品を観る前、映画の宣伝の写真を見た。
アメリカの田舎の夜の風景の中で美しい青年とアバズレっぽい彼女が話しあっている。最初この写真を見たとき彼女が「性同一障害」と思ってしまった。美しい少年が美しいだけで彼女の疲れた顔が「リアル」で彼女こそこの映画の主人公と勝手に思ってしまった。映画を観たらまったく違っていたが、本当に美しいのはアバズレからどんどん印象が変わっていって最後はやさしさ滲み出る天使のような彼女だった。主人公は性同一障害をもった青年(彼女)だが、主人公はこの映画のテーマのシンボルだが本当の主人公は彼女だと思う。
この映画は「性」がテーマだが、その「性」をもった主人公が重要でなく、その「性」をまわりの人間がどう考えるかが重要だと思います。だから本当の主人公は彼女であり私達観客の代表であるべきと思います。
その彼女は人を愛して人を信じてしかし少し現実に戻り疑いまた確信して旅に出る。そして「現実」という子供をつくる。
そんな彼女は「リアル」だ。リアルで美しい。
このテーマの「性」だが私はこのような人にもちゃんとした権利が必要だと思います。今現在は男、女の権利はあるがまだこのような人たちの権利はない。「権利」という言葉は少し違うかもしれない「認める」ことでしょうか。
「偏見」をなくすには彼女のような「やさしさ」が必要だと思います。
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