[コメント] ココニイルコト(2001/日)
この映画は言葉が大事だ。 題名の「ココニイルコト」、セリフの「ま、ええとちゃいますか。」 言葉が大事というよりこの言葉がこの映画の全てかもしれない。 テーマと言ってもいいだろう。 この映画を観終わってこの作品を思い出そうとするとこの2つの言葉しか思い出されない。
題名の「ココニイルコト」。主人公は会社の上司と不倫して大阪に転勤させられる。大阪に泊まる場所もなくホテルで何ヶ月も滞在する。会社ではクリエイティブ課だったのに営業にまわされる。まわりの人達とも本来の性格でうまく溶け込めない。まったく自分の「居場所」を失った主人公。この映画は居場所を失った主人公が自分の居場所を見つける話だから「ココニイルコト」を探す。居場所が見つかったから「ココニイルコト」。この題名は映画のテーマそのものであり、そのものだから題名として存在する。
セリフの「ま、ええとちゃいますか」。大阪の会社の同僚で次第に気になる存在の彼の口癖。「ま、ええとちゃいますか。」この言葉が居場所を失って硬くなっている主人公の心を溶かしていく。ゆっくりと。「ま、ええとちゃいますか。」1つ。「ま、ええとちゃいますか。」2つ。ひとつひとつゆっくり心が溶けていく。 「もっと気楽に生きようよ。」と言っているようだ。ラスト主人公がこのセリフを言う。彼に向けて、自分に向けて。
この言葉の映画は「映画」としては失敗している。まるでテレビのトレンディードラマのようだ。ひとつとして映画らしいシーンがない。確かに映像は綺麗な「絵」だが、レンズの絞りを解放にしてバックをぼかすぐらいの表面的な技術だけでは映画の美しさは表現できない。本来の本当の映画の美は残酷で恐ろしくとてつもなく美しい。脚本も上手いがこれも映画として存在するには普通すぎる。抑制は効いているがその抑制がなければ本当にテレビドラマになってしまう。結局映画の中で主人公が作った広告のようなうわっつらの綺麗な中身のない映画。コピーライターが作ったような映画。広告のような映画。そう言えばこの映画は電通がかんでいる。納得できる。
「ココニイルコト」。これは「ここにいること」をカタカナにしたものだ。 平仮名の歌謡曲のような意味や物語がある題名が、カタカナにする事によって カッコ良くなり意味も薄れる。まさに「コピー」だ。カタカナの題名から解るように「言葉」でうまく包装した綺麗な映画。私は言葉しか思い出せない。
「コトバダケトイウコト」
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