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[コメント] マジェスティック(2001/米)

劇中のルークの父親の台詞「映画館には魔法がある」。これが実はこの映画の主題じゃないかな?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 『ショーシャンクの空に』、『グリーン・マイル』に続くダラボン監督による映画。どちらもスティーヴン=キング原作による、極限状態における人間の力を主題に扱った作品だが、今度は舞台が前2作の刑務所の中ではなく、その一歩手前。裁判の所で止まっているのが特徴とも言える。

 この映画に関しては、非常に政治的な主張が強いように見えるので、その点に引っかかるかどうかで評価が分かれるのではないかと思う。

 この政治的な部分を好意的に見るなら、これは「正義」を扱った映画であり、当時の赤狩りの激しい時代において、“自由”を扱った発言をさせると言うことの勇気について評価されるのだろう。

 逆に否定的に見るなら、そんな“自由”の主張を偽善に満ちたもの。と考えることもできる。今頃になって赤狩りを“悪”だと決めつけ、いかにも彼らがファシストっぽく、そしてそれに対して批判する側は正義であることを前面に出しすぎたため、それが鼻につき、それに展開がベタベタすぎ。と言う点も挙げられる。こんな上手くいったら苦労しない。

 それで私がどうだかというと、自分でも意外なほど素直に観ることが出来た。何だかんだ言ってダラボン監督の展開の巧さには感心する。

 これは私にとっては珍しい。特にこういうストレートな政治的な作品は基本的には嫌いなはず。

 その理由を考えてみた。

 それで思うのだが、それはこの作品が“映画である”ことを止めていなかった事。そこにあったのではないかと思う。この映画、確かに政治的な部分を強く持ってはいるが、決してそれが主題ではない。

 主人公のピーターは“偶然”記憶を無くし、“偶然”流れ着いた町で、“偶然”同じ顔の人間ルークに間違えられ、“偶然”そこでルークの恋人がいて、互いに好きになる。ここにリアルさは全くない。おとぎ話のようなもの。だけどそれは決して不快ではない。むしろ気分良く素直に観ることが出来るように作られていた。だってこれは“映画”なんだから、どんなことだって起こりうる。その前提条件を監督が上手く使ったためだ。

 それで、そんな荒唐無稽な夢の中に主人公のピーターと観客をたたき込んだ後、急に超リアルな現実を配置する。身体こそ、その場にに引き戻されたピーターだが、彼も、観客も頭の中ではまだ夢が続いている。

 監督の狙いはそこにあったんじゃないかな?別段赤狩りを否定してるとか、共産主義とかじゃなくて、単純に、“格好良く正義を示すためのお膳立て”としてこの舞台を考えたんじゃないか?

 ピーターは夢の中にいるからこそ、“男の中の男”ルークを演じることが出来たし、観客である私達も夢の中にいるからこそ、彼のその行為を讃えることが出来る。

 私がこの映画を素直に観られたと言うのは、そこにあるのではないかと思いついた。

 これは、映画なんだ。「映画館には魔法がある」…いみじくもルークの父親はそう言った。映画館に踏み入れた観客は、魔法にかかることを心地よいと思って入る。当然魔法にかけられる側に立ってるのだから、「俺は魔法になんかかからないぞ」と構えるより、ぱっと騙される方が幸せだ。少なくとも、その魔法は私には有効だったぞ。

(評価:★4)

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