[コメント] ピンポン(2002/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
友人に「「映画」じゃないのよ!まるで「漫画」なのよ(怒)!観てみて感想聞かせて」と引きずられるようにレンタルしました。
原作は未読です。3点にしようか悩みました。個人的にこう言う映像は好みではないのです。フィルムにしてスクリーンに映す必要があるのかしらん、と。でっかいハイヴィジョンテレビで上映したほうがイイのでは?と思ってしまう。友人には悪いですが、漫画が表現する「映像」は、もっと生々しい奥行きがあると思います。
でも演出に切れがあるので観やすく、なによりもストーリーはすごく興味深かったです。王道の展開ですね。フィクションのストーリーとして、ではなく、「実際の人生」のリアルな展開として、類を見ない真っ当な進め方をしていて新鮮でした。表面的にセリフがカッコイイ、と言うより、作品の根底に流れる「魂」にリアリズムを感じて、イロイロ考えさせられました。
セリフは、「思ってても実際には口にしないよ」ってコトをぽんぽん言うので、ちとこっぱずかしかったですが、まあ、そこを突っ込むのは、個人的には子供向け番組を「子供っぽい」と言うようなものかな、と許容範囲でした。さすがに根本からファンタジックに感じたのは、主役二人の関係くらいでしょうか。少女漫画的なリリカルさで、「この関係はきっと現実にはありえないよ〜」と思いました(笑)。(松本大洋って、もっとシニカルでシュールな作風かと勝手に決めてました)
サクマ君にスマイル君が「君に才能がないからだよ」と言う意味のことを言うシーンが好きで、「スマイル君はなんて親切で優しいコなのだろう」と感動しました。「なんでお前なんだ!」と、叫ぶ相手がいた佐久間君も幸せだなあ、と思います。実際は誰をなじることもなく、静かに自分で自分に見切りをつけて、穏やかに「無意味な戦い」(←玉打ち競技の事)をする事をやめ、「実質的な戦い」をする人生を覚悟して選択して行く人が多いと思います。
何よりも一番好きなのは、雪隠詰めになっている風間君に、「俺をうらんでるか」ときかれて、佐久間君が「同情してますよ」と言うセリフ。これに4点といっても過言ではありません(笑)。
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本題です。(前置きが長くてすみません)
自分の周りでは、この映画を「青春だよね」とか、「これぞアオイハル」と、聞くのですが、私は少ーしだけ違うと思いました。自分が通しで読んでいるスポーツものは、「スラムダンク」と、「オフサイド」の途中まで、くらいなのですが、おそらく、ああ言った作品のメインコンセプトは、『君は何にだってなれるよ!!子供たち』なのではないかと思います。
でも、「ピンポン」は、『誰でも最後は「なにか」になって行くのだ』と言う話だと思いました。その過程を描いた話だと。「何にだってなれる」時代が「青春」ならば、その青春に片をつけ、結果としてそれぞれが「何かになってゆく」のが、「ピンポン」と言うストーリーではないかと。先ほどの、「君に才能がないからだよ」と人に言ってしまうセリフは、将来のある子供たちに夢と希望を与えなければいけないジャンプやサンデーでは、意外と言わせることの出来ないセリフだと思います。「スピリッツ」ならではのスポーツ物なのだなあ、と改めて思いました。
「何にでもなれる自分=子供」である事をやめ、いままで馬鹿にしていた大人達のように、覚悟を決めて、たかが「何か」にならなければいけない青春の終わり。そして、「たかがサラリーマン」になったり、「たかが(何度も何度も負けなければいけないし、訓練も辛い)卓球選手」になったりする。
それを怖れれば、「ピンポン」にはそういう人は出てきませんでしたが、「何者でもない大人」になってしまうのでしょう。
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