[コメント] 春の日は過ぎゆく(2001/韓国=日=香港)
ラーメンぐらいしか作れない比較的自由な女と、家族の愛情の大切さを祖父の失踪で嫌というほど分かっている比較的真っ直ぐな男との恋愛。
女は、男とは自然体の部分で結びついているが、生活感・仕事への欲望・全く違う男への欲望等、違う部分を自覚しているので再び結婚する気にはなれないでいる。 恐らく前の男も同じタイプだったのだろう。
男はそんなことは全く考えてないで一途に好きになっているから、何故女から不意に別れ話が出るのか、そのこと自体不思議で信じられない。
仕事をやめざるを得ないほど失恋の傷が深かった男は、去るものは追わずと言って自殺した祖母に自分を投影し、泣き、ようやく自分を取り戻そうとする。 死んだ祖母の靴の向きを家の方に変えるシーンがあります。温かい優しさの感じられるいいシーンです。
映画全体で、男の方から恋愛をじっくりと見、その喜び・苦しみを淡々と(「自然の音」に寄せて)表現するというのは前からあったようであまり記憶がない。
人間は自然からの音、声(メッセージ)を聞こうとしなくなって久しい。 自然の音を聞くと言う事は、それに家族・祖先・愛した人の声も含まれるんでしょうか。 ラストシーンは音を聞いている男の、またあのはにかんだ笑みでストップモーションになるが、確かなメッセージを聞いたんでしょうか。素晴らしいラストです。
永遠のテーマでありながら、私たちが最近掘り下げなかった愛というものをじっくりごく普通の男の角度から描いた秀作です。
いまは女が強く、繊細でないから、男の方から描く必然性・時代性があるのかもしれない。
かなり小津を意識した感じもしますが、新しい映画が生まれたと思いました。 今のところ今年一番の収穫ですね。
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