[コメント] ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔(2002/米=ニュージーランド)
不感症の戦闘に明け暮れた後に訪れた、一瞬のドラマ(激情)
信と疑の間で引き裂かれるという人間が負って然るべき苦悩をスメアゴルに肩代わりさせる物語が、鋼鉄の心を持った超人達と心なき怪物が繰り広げる問答無用の聖戦に埋没して行くかに見え、正直言って、一旦は取り残されかけたが、俺と同じく戦闘の傍らにいたフロドに今回は救われた。そう、今回、フロドの心は、戦闘に殉じる者たちと共には無かったように思う。心が彼らから離れていたわけではない。彼らを想う余裕さえ無かったのだ。
それ程までに長旅と堂々巡りに疲労困憊しながら、なお指輪を担う業苦に蝕まれ、また指輪に屈する誘惑に苛まれ、内に秘めた負をさらけ出して、猛り、親友の喉元に刃を突き付けては、自らにも、醜い憎しみと暴力が巣くっていることを認めざるをえなくなり、のたうち回る。1から2へと旅してきて、ようやく一つドラマ(激情)を見せて貰えた気がした。
フロドが此処までに辿ってきた経緯を知らずに、兄ボロミアと同じ過ちを犯そうとしたファラミアだったが、このドラマを見せつけられた一瞬で、彼らの辿ってきた旅の重みを理解できてしまう。それは、あちらでもこちらでも戦闘に明け暮れ、もはや戦うことに対し不感症になりかけている彼ら(登場人物達)と我ら(観客)が、憎悪と憤怒に自分を見失いそうになっていたことを、痛切に自覚させられた一瞬でもあった。
特撮ファンの俺が常に望んでいるのは、壮大な特撮絵巻ではなく、特撮シーンが自らの役割を果たすことで自らの後に迎えることができる、この一瞬のドラマ(激情)なのだ。
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