[コメント] マトリックス レボリューションズ(2003/米)
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個々のシーン、確かにミフネ氏は頑張ってたし、最後の決着を殴り合いでつける、というのも私好みなのだが、演出がヘタ過ぎて流れに全然乗れない(必死で乗ろうとしたんですがね)。 私は演出の技法とか、うるさくない方なんだが、この映画の演出、俳優の覇気の無さはちょっとやばいと思う。相変わらずザイオンのメンバーは会議やら言い合いをしているが、内容の割りには時間ばかり懸けて退屈だ。もちろんそうしたシーンでも演出しだいではいくらでも面白くできそうだが、カメラの位置はいつもいっしょだし背景も平板だし俳優はただ眉間にしわよせて難しい顔をしているだけ。ザイオンの人々の性格付けがまったく出来ていない。ミフネ氏以外の顔が覚えられない。とにかく1作目から感じていたことだが、監督は演技指導というものをしていないのではないか?最初は無表情で突っ立っているのが「スタイリッシュ」みたいに受け取られていたのだが(実際、1作目はあんまり演技というものを必要としないで済む内容だった)、話が複雑になり、人物の内面や葛藤を描く必要が出てくるとボロが出始めた。 なにより、第1作目からのメンバー、トリニティとモーフィアスのゾンザイな扱いはどうか?モーフィアスなど最初の威厳は何処へやら・・・ただ座ってるだけ。というかセリフ無し。このあたり、ちゃんと結末まで考えないで突っ走った結果、ツケが回ってきたような気がする。 スミスが殴っても殴ってもネオは立ってくる。プログラムに過ぎないはずのスミスに驚愕と恐れの表情が浮かぶ(思えばこの映画で一番表情が豊かな〈人間らしい〉のがスミスというのが皮肉だ)。矢吹丈対ホセ・メンドーサ、ケンシロウ対ラオウなどを想起させる名シーン・・になるはずだが、ここまでのもって行き方がヘンなので素直に感動できない。要するにこれは裏取引という奴では・・・。そっちの難儀を取り除いてやるから、攻めるのは勘弁してって、それはヒーローとしてどうなのか?そもそもスミスがあれだけ増殖してもあんまり困ってるように見えなかったが(マトリックスにどのような弊害があったのか明かにできないのも問題)。 一般受けするとは到底思えなかった「仮想現実もの」に果敢に挑戦し、大娯楽大作としてヒットさせたことには率直に敬服しますが、残念ながらやはり力量が着いて行けなかったということでしょう。 妄想半分の願望を言えば、ザイオンを見せるべきではなかった、あれは人間の希望の象徴として抽象的な存在として残すべきだったと思う。仲間が増えるにしても向こうの方から船で来る、というようにする。それで機械都市を漂流しながら細々とゲリラ的な活動をするという惨めな現実を徹底的に見せつつ、メインの見せ場は飽くまでマトリックス内で華麗に展開、とした方が緊迫感があると思うんだが。あとマトリックスに住む人が「こっちの方が平和で楽しいのに何で現実に返らにゃならんのだ。」と言われてネオが「お、俺たちのやってることは間違っているのかぁー?」と悩む描写も入れたい。
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