コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 死ぬまでにしたい10のこと(2003/カナダ=スペイン)

これはいけない作品だ。予告編ではもっと明るい作品だと思ったが、はっきり言って暗い。しかも、死ぬまでに何してんだよ〜、って感じ。これには同調できない。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







正直、本作を観るまで、「残された人生、家族と楽しもう!不倫もしちゃおう!」てな、感じの明るい作品だと思ってました。ところがどっこい、全くの逆だったのです。

(以下、しんみりとした作風の本作にとやかくケチをつけるのは、あまりよろしくないことと思いつつも、ちょっとおかしいと思うので、やっぱりケチをつけてしまいました。感動された方、気を悪くされないでください。)

自分の病気を家族に知らせない。娘に毎日愛していると言う。刑務所の父に会いに行く。彼女の決意のうち、この部分は納得できました。

しかし、上の3つを含む死ぬまでにしたこと全てが、生きている間の自分の為、或いは残された人の為というよりは、残された人達に自分の存在を忘れさせない為の努力であったと思われる点、理解に苦しみます。夫を裏切ってまで不倫したのも、「生きている間にもう一つ恋がしたかった」と考えるよりは、「死後、家族以外に自分のことを思ってくれる人がもう一人ほしかった」としたほうが、普通の解釈だと思う。

最も残酷だと思ったのは、2人の娘に自分の声を10何年も聞かせようとしたところ。プレゼンテーターを夫ではなくドクターにお願いしたことなど、赤の他人であれば、その家庭の状況に関わらず、ある意味ドライな感情で機械的に渡してくれるであろうことを暗に期待しているようで、かなり怖い。これでは、娘が新しい家庭で幸せになるどころか、過去に引きずられた人生になってしまうのではないでしょうか? 残すなら一本のテープで十分だと思う。

本作の作風とは全く異なりますが・・・

人が死ぬと大抵の人は、相手によらず、「惜しい人を亡くした」といいます。もちろん無関心の場合もあるのでしょうが、葬式の場で悪口が語られることは滅多にありません。これは通常の礼儀ともいえるのですが、反面、どんな親しい間柄、或いはどんな憎らしい悪友だっとしても、死者の思い出を昇華し、「生きるため」に忘却してしまおうとする人間の野性的本能の一つとも言われています。

作品的に主人公の最期の振る舞いが許されてしまうのもこの本能の顕れだと私は思います。死が前提だからこそ許される行為。そんなのは甘えです。もし、治療法が見つかって主人公が長生きしたら、取り返しのつかないことになっていたであろうことは目に見えています。誰も同じようには許してくれません。

以上、長くなってしまいましたが、まとめますと、残された人が幸福に過ごす為には、過去の人間の「忘却」が少なからず必要で(完全に忘れろと言っているわけではありません)、過ぎ去った人からいつまでもその存在をアピールされることほど迷惑なことはない、というところです。

ところで、原題"My Life without Me"を「私の死後も私はいる」てな感じの意味と捉えれば、彼女の努力も納得できるし、ある程度筋が通ったストーリーになります。こう解釈したところで、感想は変わりませんが・・・。

(評価:★1)

投票

このコメントを気に入った人達 (11 人)もがみがわ[*] うさこ Orpheus のこのこ ボイス母[*] リア[*] ALOHA[*] まご[*] 映画っていいね[*] トシ[*] Myurakz[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。