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[コメント] ベスト・フレンズ・ウェディング(1997/米)

「またやっちまったゼ」と失恋するたびに観ては泣き、「でも、オイラも独りじゃないサ」と微笑む力をくれる、オイラにとっては大切な映画。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画は、確かに、ジュリア・ロバーツが、他の女に横取りされそうになって(しかも、自分よりピチピチしてて、美人だから許せないッ!)、親友の男を奪還しようと悪戦苦闘、悪あがきをする、[Romance/Comedy]が主軸です。

だけど、何より、僕がこの映画を愛してやまない理由は、人が人を愛することに、恋愛も友情も越えて、男も女も越えて、全部包みこんんだ「温かいまなざし」があるところです。

生活を共にしたり、独占することはできなくとも、あなたにだって、あなたを大切に思ってくれている、大切な誰かがいるんだ、そう気付かせてくれるんです。

僕にとって、人生を最期まで共に歩むパートナー、人生の中で流れゆく景色をずっと共に見つめ、思いを共有するパートナーは、まだ見つかりません。でもでも、僕には、"ずっと"じゃないけれど、出会うたびに、流れゆく景色を共に楽しむことのできる「偶然の旅行者」、本当に心から「友」と呼べる人たちと、たくさん出会ってきたじゃないか、そう気付かせてくれるんです。

昔、大阪で知り合い、今は鳥取に嫁いだ友達がいます。彼女が大阪にいるときは、毎週末のように酒を酌み交わしたし、喧嘩もしたし、「もうダメかもしれない」と泣きながら抱きついた夜もあったし、どうしようもない自分もたくさん見せました。ダメさ加減、情けなさ加減は、本作のジュリア・ロバーツどころの騒ぎじゃありません。

それでも、それでも彼女は、時には「サイマフ、それはちゃうで!それはアカンで!」と叱咤激励、時には黙って最後まで話を聞いてくれ、時には共に泣いてくれたり、時にはサプライズ・パーティーを開いてくれ、時には、生まれて二度目に、オイラが何かを食べて泣いたという、そのひとつ「オレンジ・チーズケーキ」を作ってくれました。

そんな彼女の披露宴、僕は、BGMを担当し、さらに、友人代表でスピーチをしました。まだまだ閉鎖的で封建的な地方(山陰地方の方、申し訳ありませぬ)で、しかも、農家の嫁となる彼女なのに、男の僕を友人代表にするのは、かなりの勇気と度胸です。(…そこで、僕も一大決心をしたんですが、それはまた別の話。)そして、詩を読みました。(面白いことに、彼女より、新郎が思いっきり感激してくれて、ハグハグされました。笑)

あれから三年の月日が流れ、今、彼女は大変な状況にあります。で、僕は、この映画のルパート・エベレットでありたい、そう思っています。

エベレットが劇中で歌う、「小さな願い」("I Say A Little Prayer")、あのシーンは、何度観ても、笑い泣きしてしまいます。(彼女の結婚式のBGM[退場のとき]でも使いました)

そして、ラスト。「人生は饗宴(狂想曲)だ。踊ろう!」("Life is extravaganza. Let's Dance!")のことばと共に、ロバーツに微笑みを取り戻させ、共にステップを踏み出すふたり。やっぱり、何度観ても、笑い泣きしてしまいます。

ジャック・リベット監督の『恋ごころ』を観て、一番にこの映画を思い出しました。ヌーヴェル・ヴァーグじゃないけれど、思いっきりハリウッドだけれど(監督は、オーストラリア人であるP.J.ホーガンだけど)、この映画の登場人物たちも、みんな《自由》です。「映画の魔力」だって、負けてやしません。

人間は一人で生きていかなくちゃならない。でも、人間は独りでは生きていけないんだ。だから、側にいてくれるあの人を大切に、今は側にいなくても、遠く離れていても、大切に思っていてくれるあの人を大切に、これから側にいてくれることになる、まだ見ぬあの人を大切に、そう気付かせてくれる、僕にとって大切な映画です。

[video/date unknown/uncountable times]■[review:3.27.02up]

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このコメントを、婚約されたかっきーさんと、めでたく5周年を迎えた、このCinemaScape[批評空間]に捧げます。

映画とあまり関係なくて、しかも「使いまわし」と思われたら、申し訳ないのですが、最後に、件の結婚式で読んだ詩を、かっきーさんとフィアンセのおふたり、そして、この映画の登場人物に捧げます。

いつの日か、このreviewに、かっきーさんが気付かれる「縁」を信じつつ。

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「旅立ちの詩」

君たちは行く 誰もがひるんでしまう あの赤く枯れた荒野を

雄々しい手が か弱き手を包み

堅く握りしめた手から 無数の幸せの種がこぼれてゆくだろう

やがて

雨を忘れた大地にも 純白の根が果敢に伸びてゆき

くじけそうな ふたりに 進むべき道を開いてくれる

.

君たちは行く 誰も踏みしめたことのない あの青く濡れた草原を

柔らかく温かいクローバーの絨毯が

傷ついた足を 包み込んでくれるだろう

そして

名もなき白い花には蜜蜂が戯れ 甘く芳しい匂いが充ちてゆき

疲れきった ふたりを 癒してくれる

.

君たちは行く 誰もが眺めるだけの あの黒い海原を

渇いた泥にまみれた足を潤し清める 白濁の波に

溜めこんだすべての涙を返せば 辛く悲しい記憶も一滴の滴となるだろう

やがて

鴎たちが ふたりを覆う鉛色の雲を 連れて巣に戻り

迷いそうなふたりに 帰るべき道を示してくれる

.

そして君たちは飛ぶ 誰も飛ぶことができない あの完璧な大空を

ふたりを阻むものは何もなく

あるのは 閉じてしまいそうな翼を 優しく押してくれる風と

かじかんだ翼を 暖めてくれる朝の光だけ

やがて

暗闇に閉ざされて見えなかった ふたりが目指すべき大地が

すぐそこにあることを ふたりは知る

.

そして 君たちがどこへ行こうとも

わたしは そこに永久の愛を見つけ そこに幸福の鐘の音を聞く

今が旅立ちの時、

ふたり手を取り合い生きてゆく証となろう

(評価:★5)

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