コメンテータ
ランキング
HELP

水那岐さんのコメント: 更新順

★4母親たち(2018/仏=ベルギー)アリスという女が異常に癇に障る女なので、彼女が危機に怯えるサイコサスペンスと見る限りなんと不愉快で感情移入しかねる作品かと呆れていた。だが、その苛立ちは終盤に至って不思議に腑に落ちる人生論に変貌するのを感じさせられる。 [review][投票]
★3ヴァチカン美術館4K3D 天国への入口(2013/伊)門外不出の名品たちを一堂に見渡せる好企画ではあるのだが、如何せん短く浅い。ミケランジェロの壁画だけでも十分に人を魅了する一篇が作れることを思えば、これは馬の鼻先にぶらさげるにはあまりに貧弱なニンジンだ。つまらぬ金言や聞き飽きた薀蓄は要らない。全編を美術品の乱舞にしたほうが絶対的によいのは誰もがわかることだ。[投票]
★4ワイルド・ローズ(2018/英)玄人はだしの歌唱力がすっかり物語を包み込んでしまえたジェシー・バックリーだが、その才能が彼女の選択を疑わせる。ほんとうに「イエローブリックロードはここにもある」のか。 [review][投票(1)]
★2BLACKFOX(2019/日)本当に2019年の映画なんだろうか。だったら人種やメンタリティの差異とか、せめて個々の人間の精神の複雑さくらい描写してくれ。「クサい」話って評判は、設定や物語が古いから巻き起こるんじゃない。演出家がもろもろの人間をよく見てその思考を掘り下げ、人間の生き方をリアルに刻み込まないから立つんだよ。いろんな国の映画くらいよく観て模倣してくれ。[投票]
★2グラン・ノーチェ!最高の大晦日(2015/スペイン)スペイン発のブラック風味オールスターどたばた喜劇ということなのだが、惜しむらくはスペイン語の知識皆無なのでマシンガントークの1/10も理解できず、かなり睡魔に襲われた。スペイン通の作家が訳した吹き替え版で観たかったものだと切歯扼腕。[投票]
★3mellow メロウ(2020/日)この男が異常にモテるのは、気遣いができるとかといった理由以上にただ鈍感極まりない花屋バカであるせいだろう。俺がこんな状況に陥ったら数日で総白髪になり、剪定ばさみで近寄る女たちを滅多刺しにして自殺して果てるだろう。人に告白するなんて簡単なことよりずっと恐ろしいことが人を振った翌日そいつに挨拶することだ、と確信しているからだ。それでも観られたのは… [review][投票]
★3ザ・ファイブ・ブラッズ(2020/米)スパイク・リー監督作だったから最後まで観られたんだな、という感想。ベトナムに舞い戻った仲間たちが狂気に蝕まれ本性を現わす娯楽作だが、予定通り白人主人公で撮っていたら俺は途中で脱落していた。俺は米国の人種間問題には興味があり、リーの蘊蓄にはいちいち頷いていたのだが、要するに戦争アクションというジャンルに心が動かないタチだった。[投票]
★4ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019/米)時空間移動の唐突さに戸惑わされたが、ローナンの原稿持ち込みからはじまる本編のアイキャッチ能力はいまリメイクを行なった意義を訴えている。美貌だけではない姉妹の一喜一憂のインパクトと胸に迫る感情の強調。女性監督ならではのメッセージ性に嫌味が纏わりつかぬ処理は見事であり、姉妹の生き方は観衆の意識に太く刻まれる。「見せ場のデパート」とも言える演出の妙も評価の一因。[投票(3)]
★1俺のシテがやられる(1997/仏)ドキュメンタリーめいたこの映画に起承転結はなく、共感や怒りを感じることもなかった。若さや国籍ゆえではないだろう。若者はつねに自分をめぐる理不尽に原因があるような気がして周りを攻撃する。だが、その怒りは正しいときよりも素っ頓狂に外れているほうが多いのだ。一介のオトナから見ればはた迷惑なコドモの筋なき反逆劇。ナンセンス。 [投票]
★4泣きたい私は猫をかぶる(2020/日)可愛い話。ただ、波風を立てずに自分のバリケード内に厄介になる事をしまい込み、自分は自分流に笑いに変えるのが常道、というヒロインの処世術を思えば、ほのぼのなんかはしちゃいけないのだが。そこが実に甘酸っぱく味わえるからといって…。だが、猫世界のほうは些か冗長だったのが残念。べつにこれは異世界ファンタジーである必要はないのだから。[投票(1)]
★4LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標(2014/日)徹底してメインとゲストキャラのスタイルで魅せるハードボイルド劇。謎解きよりは過剰にカッコいいハッタリが優先するが、これを盗み見た子供らは鼻血が出そうなオトナの隠し事に嫉妬するだろう。思わず旨いタバコが吸いたくなる罪作りな結末。 [review][投票]
★3LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門(2017/日)物語よりは画面のインパクトで見せる作品。敵の強さもシリアスながら余計に漫画的な演出を選んでいるわけだが、タイトルに違わず容赦ない剣戟シーンの連続で「肉を斬らせて骨を断つ」そのもののシーンも現れ、気の弱い観客には薦められない。五エ門のマゾヒスティックな修行も同様。やはり映画にしては起伏に乏しく、次元のエピソードほどの面白みにも欠ける。[投票]
★3LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘(2019/日)ハードボイルド・ヴァージョンの当シリーズにあっては、常に他人を信じない不二子こそが本音を口にする。どうあれ、彼女の子供時代を抉ったTVシリーズ『峰不二子という女』に準じているようだが、それはキャラをちっぽけに押し縮める愚行じゃないだろうか。「謎の女」で充分。本音ばかりが目立つようになってはただのオバさんだ。 [review][投票]
★4シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション(2018/仏)96%はギャグ漫画…とはいえ、日本の漫画というよりはフランス艶笑譚として十分に描き直したシロモノ。とにかく下品でスケベ(エッチといった少年趣味というよりオヤジ向けのイヤらしさ)。動物虐待ネタは欧州じゃ大丈夫なのかと心配になるが、一見さんでも笑える気楽なノリである。残り4%の泣かせは安心の原作オマージュか。キャラ愛は確実にあるのが好感。[投票]
★5カブールのツバメ(2019/仏=ルクセンブルク=スイス)水彩タッチの抑制のきいた画面は、変化しない澱の底のような言い知れぬよどみに満ちている。そこで展開される暗くはかないお伽話。チャドルという宗教的な囚人服に近いものが、この物語の有効な小道具である。お話は寓意を伝えるため単純で戯画的だが、これをアニメで撮ったスタッフの諦念も、そのまま観客にはストレートに届いてくる。[投票]
★5甲鉄城のカバネリ 海門(うなと)決戦(2018/日)時代劇SFアクションという魅力的で精緻に構成された世界観と、至極いい意味で80年代的なヴィジュアル。不勉強ながら触れていなかったことを恥じる良質さ。TV版の大河内一楼脚本から荒木哲郎にバトンタッチしたことでのラブコメ要素の拡大は鼻についたが、基本的にキャラクターの創り込みは充分に為されていて飽きさせない。[投票]
★2アシク・ケリブ(1988/露)ジョージア人の生来の美貌、伝統芸術の華美、舞踏と音楽の妙。そういったものに依存して映画の文法(それは自ら作り出したモノでも納得さえ伴えばいいのだ)やダイナミズムを寄り添わせぬ映画は映画ではない。ただの伝統芸能の正面からの接写の羅列にすぎない。美しさが感動に連結しないのは、映画の奇跡に依存する懐古フィルムでしかないせいだ。[投票]
★3ミス・アメリカーナ(2020/米)沢田研二の政治発言が疎まれ、きゃりーぱみゅぱみゅの意見撤回が嘲笑われるコロナ禍渦中の日本は、今ますます「国民一丸となって」ある方向に突き進もうとしている。滑稽な対応を笑われる陰で「やりやすくなった」と本当に笑っている為政者は確実にいるだろう。作品はそれほど含みはないが、今のこの国の処方箋としてはうってつけ。[投票(2)]
★3ホドロフスキーの虹泥棒(1990/英)老境の名優、ピーター・オトゥールオマー・シャリフの存在感、洒脱な喜劇的演技の素晴らしさよ。だが、そんなものたちにホドロフスキーは寄せる感情を知らない、あるいは欠片すら興味を抱いていないことは誰の目にもあきらかだ。 [review][投票]
★4ホドロフスキーのサイコマジック(2019/仏)安っぽい新興宗教の頭目のように、ホドロフスキーは患者たちに嬉々として自慢の治療を繰り返し、自己の無謬を訴える。しかし、その作品群をなぞる肉体的治癒の方法論の怪しさは故意のものであろう。胡散臭い教祖も、難病の治癒を讃えさせるグロテスクさすら圧制者のいかがわしさに勝ることを知っている。これは国家への大いなる皮肉だ。民衆に寄り添う顔でその思想の芽を摘む者こそが「聖者」だ。[投票(1)]