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★4鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言(2011/日)職人ドキュメンタリの垂涎作。好好爺とまでは云わずとも、話しぶりのまろみのためもあって西岡常一氏の鬼感は決して大きくないが、その言葉・所作・表情、またそこから窺える膨大な知識と強靭な思想はまさに「映画」が撮るべき稀有で偉大なパーソナリティだ。一人前になったお弟子さんがまた感動させる。[投票]
★4トガニ 幼き瞳の告発(2011/韓国)むろん直視するには覚悟と忍耐を要する惨たらしい事件で、事件そのもの、また裁判の進行に対しても「こんなことがあってはならぬ」と義憤に駆られたりするのだけれど、何が最も禍々しいかと云えば、海原はるか師匠を邪悪にしたような双子のおっさんの顔面である。というのが両価的で映画らしい不謹慎だ。 [review][投票]
★4ピナ・バウシュ 夢の教室(2010/独)とびっきり美しい映画。嗚咽号泣を強いられる瞬間が複数ある。この感動は『ベルリン・フィルと子どもたち』以上に『100人の子供たちが列車を待っている』に近い。稽古シーンで緑のドレスをまとっているジョイという少女はエル・ファニング的透明感の持ち主で、撮影者も編集者も彼女の虜になっている。[投票]
★4ニセものバズがやって来た(2011/米)矢継ぎ早に繰り出される台詞群が映画をスウィングする高速スラップスティック喜劇。グループセラピー(!)に参加する玩具たちは各々の存在自体が一個のギャグでもあり、その総ギャグ数はバスター・キートンの二巻物にも肩を並べるだろう。さらにそれが前のめりに連打されるに至っては爆笑を禁じえない。[投票]
★4Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち(2011/独=仏=英)ピナ・バウシュの業績を振り返るのは別の機会にして、全篇撮り下ろしの3Dダンス映画に仕上げてほしかった憾みもないではないが、舞踏団を屋外に連れ出したヴェンダースは断然偉い。思い切って一点だけ挙げるならラストの荒野行進が殊に感動的だ。まあ『8 1/2』しかり、これは私の弱点なのだけど。[投票]
★4スノーホワイト(2012/米)演出が人格を彫り込んで作中人物の魅力を起ち上げた例は無で、唯一シャーリーズ・セロンが自身の個人技でそれを為しかけているに過ぎない。成長期を牢で過ごしたはずのクリステン・スチュワートが全力疾走や下水口への滑り込みを易々と決めるのは痛快だ。獄中での鍛練を暗示して、ヒロインにふさわしい。 [review][投票]
★4生きてるものはいないのか(2011/日)この笑劇勘は『逆噴射家族』よりもよほど鋭い。これだけ優秀な無名若手俳優を大量に発掘したことは日本映画の財産となるだろうし、その中で村上淳渋川清彦が頼もしさを感じさせるあたりも感慨深いものがある。破壊や終末の風景をどこか爽やかにしてしまう作家的人徳も久々に触れる限りでは歓迎したい。[投票]
★4悲しみのミルク(2009/ペルー=スペイン)「馬鈴薯」という即物的で突拍子ない、可笑しみさえありそうな細部が抜き差しならぬ選択であるという逆転感覚がいい。ナターシャ・ブライエによる強力な固定撮影、さらに荒涼たる風景(砂地の披露宴!)と原色を恐れない色遣いが映画に個性と普遍性をもたらしている。「労働」の映画であるのも私好みだ。[投票]
★4レイン・オブ・アサシン(2010/中国=香港=台湾)広言されている通り、ジョン・ウーは製作上のサポートに徹しているように見受けられる。なかなか気合いの入った撮影で雰囲気は上々だが、無駄に婬猥に造型されたバービー・スーであるとか敵の親玉の真の目的などがしょーもなすぎて笑えてくる。べらんべらんに曲がるミシェル・ヨーの剣がとりわけ面白い。[投票]
★4エイリアン・ビキニの侵略(2011/韓国)スペースバンパイア』の落胤。低俗志向の性的描写が真SFな実存的恐怖に直結するという見取り図を立体化する技術はむしろ巧みで、笑いを狙った飛び道具使用に厭らしさが伴わないのにも感心する。格闘アクションは演出というより演者の個人技の賜物だが、これも意外性を持った組立てが試みられている。[投票]
★4運命の子(2010/中国)権力の簒奪にあたって「一族を根絶やしにする」という発想もその方法(落とし穴! 投げ殺し!)もえげつないが、ワン・シュエチーが必ずしも憎たらしく造型されていないあたりに喜劇性の萌芽が窺える。厳しい復讐劇ではなしに、可笑し哀しい悲喜劇として語るあたりがチェン・カイコーのモダーンな解釈か。[投票]
★4無言歌(2010/香港=仏=ベルギー)「砂漠」と「穴蔵」という究極かつ必然の空間対照を根幹に、生存の過酷が正確に衣・食・住の挿話/細部として撮られ、ぞんざいに隣り合わされた生と死は具体として立ち現れる。生者が「まるで墓のような」穴蔵に居住する一方、死者が眠る墓は「穴を掘る」と対の運動として「土を盛ら」れた土饅頭である。[投票]
★4アニマル・キングダム(2010/豪)ハリウッド・スターとは懸け離れた芋面どものあたふたを眺める愉快はある。主人公の少年に一向に主人公らしさが与えられないのはもちろん作者の期するところで、ゆえに却ってラストシーンが決まる。全般に官憲の登場の仕方もいい。ただし、題名が期待させるような畑正憲的展開を確認することはできない。 [review][投票]
★4ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(2011/米)人と人の繋がり、もしくはコミュニケーション、あるいはもう少し正確を期して云い換えれば「他者との接点の生成」について豊かに描いている。その方法の代表格は云うまでもなく「会話」だが、ゆえに他者と会話を交わすことに難を抱えるトーマス・ホーン少年のキャラクタリゼーションはここで必須である。 [review][投票]
★4ヤング≒アダルト(2011/米)シャーリーズ・セロンが断然すばらしい。実際に隣にいたら張り倒したくなるような高慢ちきでも、スクリーンを介せば観客は彼女の可愛げを発見できる。だが、それもジェイソン・ライトマンの広い視野と細かい仕事があればこそだ。演出家の慈しみが主人公を喜劇の犠牲から救う。ラストの処理も支持したい。[投票]
★450/50 フィフティ・フィフティ(2011/米)演出と配役が一体化した好例だ。この演出とジョセフ・ゴードン=レヴィットは互いを不可欠のものとして要求し合っている。そして、生きることとは痕跡を残すことであると主張するかのような「痕跡」の映画だ。火山の番組、別れた彼女の絵画、丸刈りの頭、手術跡、セス・ローゲンが書物に加えた書き込み。[投票]
★4アトムの足音が聞こえる(2010/日)確かに大野松雄は天才に違いないと了解する。正しく被写体=大野の人柄に多くを負ったドキュメンタリだが、「音響デザイン」は有声映画の根本に関わる問題でもあり、大野や関係者との出会いは今後の冨永の作品に小さからぬ影響を及ぼすだろう。パードン木村はちょっとハシャぎすぎ。気持ちは分かるけど。[投票]
★4東京暗黒街・竹の家(1955/米)情無用の街』のリメイク。ということは脚本ハリー・クライナーのみならず撮影ジョセフ・マクドナルドも両作に共通するスタッフだが、一方が黒白・スタンダード、他方がカラー・シネスコという点も含め、ルックに関して類似を見出すことはほぼ不可能だ。敢えて優劣をつけるならば、むろんこちらが上だ。 [review][投票]
★4蒸気船ウィリー(1928/米)バスター・キートンから材を得たウォルト・ディズニーは形状主義とでも云うべき誇張された身体表現の視覚性で「映画」の延命を図る。一方、あらゆる動物が楽器化して「わらの中の七面鳥」を奏でるという常識外れの着想は、しかし「効果音」と「音楽」を未分化に捉えた点から云えばむしろ「現実」である。[投票]
★4勝手にしやがれ!!成金計画(1996/日)シリーズでも飛び抜けて滅茶な作がこれだ。ヘロイン仲介業の高土新太郎や狂犬の立花つくしなど異様な造型を強いられた素性不詳の俳優たちが入り乱れ、ループ展開を空虚な混乱が支配する。また、銃撃戦の欲望を抑えきれなくなった黒沢清の喜劇演出が幸せなナンセンスにしらけきった陰惨さを混入している。[投票]