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[コメント] マンチェスター・バイ・ザ・シー(2016/米)

静かにゆっくりと春が訪れるような優しい再生の物語。バイ・ザ・シーである。
pinkmoon

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







マンチェスター・バイ・ザ・シー、、なんて優しいタイトル。と思っていたら、なんとバイ・ザ・シーまでが実際の町名ではないか。アメリカの軽率さ寛大さには驚かされる。

マット・デイモンケイシー・アフレックの名前が分かった時から、グッド・ウィル・ハンティング/旅立ちを期待したがやはり正しかった。

映画は裁かれない罪を背負ったリーの再生の物語。

ボストンに暮らす粗雑な男。 兄の死をきっかけに交錯して見えてくる現在と過去。 段々と明らかになっていく壮絶な過去。 特に丁寧に扱う3枚の遺影。 しかしその写真もアップされることはなく、リーの苦悩と心の軋みを淡々とフイルムに投影していく。 元妻ランディーとの再会のシーンは極め付け。 裁かれる罪ならばどんなに楽か。

全編に渡って実に丁寧に作られた映画だが、後半一箇所だけ衝撃的な描写があった。 リーの眠りの中に子供たちが現れて火事を警告したシーンだ。 淡々とした描写の中に、突如差し込まれる映画的マジック。 これこそが映画にのみできる表現。 素晴らしい脚本だ。

唯一残念だったのが音楽の使い方。 リーの起こした事故が明らかにされていくシーンでは、アルビノーニのアダージョを使わずとも十分に訴えることができた。少し過剰な演出に映った。

兄のジョーは乗り越えて欲しい思いで、息子パトリックの後見人を託す。 リーは「乗り越えられない」と最後に涙する。 でも確実に変化した。これからのリーとパトリックの少しでも明るい未来が垣間見れた。

エンドロールは静かに波の音で終わる。 やはりバイ・ザ・シーなのだ。

(評価:★4)

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