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[コメント] ギャング・オブ・ニューヨーク(2002/米=独=伊=英=オランダ)

この映画の主役はニューヨークでありダニエル・デイ・ルイスである。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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「イカレ野郎」好きのスコセッシなんだからダニエル・デイ・ルイスが主役にきまってる!デカプーは狂言回しにすぎない。これはダニエル・デイ・ルイスを楽しむ映画だ!

「舞台は重厚かつ詳細に描いたがドラマまで手が回っていない」という一言で言い切ってしまってもいいのだが、予想していたより面白かった。映画を観たなあという満足感はある。 たしかに我々は「ギャング」というと禁酒法時代の「マフィア」のイメージが強いが、これはその100年も前の「元祖ギャング」の話。観たことない時代もまた面白かった要因かもしれない。

 自身がニューヨークっ子でニューヨーク派と呼ばれる(というかほとんどニューヨークが舞台の映画ばかり)のスコセッシが描きたかったものは全てラストシーンに凝縮されているのだろう。「これがテーマだ!」という分かりやすい明確さが無いのはスコセッシ映画の特徴。ただ、かつての作品は(小説で言えば行間を読ませるように)観客に解釈を委ねていたように思う。それ故、各々が各々の解釈で「物語」を紡ぎだせたのだ。ところが本作は、一見分かりやすい(観客に解釈の余地を与えない)テーマめいたものがたくさん詰め込まれているため、単に「整理されてない」印象しか与えていない。

 例えば「疑似父子の物語」と取れないこともない。これだけ「血」のイメージが強いのだから、むしろそう解釈するのが自然だろう。だとすればオイディプスである。オイディプスでなければならない。それならばデカプーが主役である意味が出てくる。だがこの映画からはそういったあらゆるメタファー(隠喩)が読み取れない。その結果が「ドラマが薄い」「中途半端」という印象につながっている(ま、それだけじゃないけど)。

 民間人に向けて軍が銃を向けるという血塗られた歴史を持つ「正義の国アメリカ」。だが、そういう「自国の恥部」を晒したという印象もないしなあ。いっそマイケル・チミノの『天国の門』くらいやればよかったのに(会社を潰せという意味ではない)。

(評価:★3)

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