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[POV: a Point of View]
強引な男・相米慎二の仕事

カットを割る事を恐れているかのような強引な長回し。熱演する演者を蟻のごとく捉えるロング・ショット。無頓着にさえ見える光の処理。不思議な魅力でもあり、ときにはそのルーズさに苛立ちもした。『あ、春』・『風花』と、次のスタイルを確立しつつあっただけに早すぎる死が惜しまれる。(A・・80年代、B・・90年代、C・・00年)
A★5ラブホテル(1985/日)裏町の石段を下ったどん底に、男がひとり。吸い寄せられるように、石段を降りた女がふたり。三人が見てきたのは地獄。桜吹雪に香るのは修羅の春。ラストシーンは絶品。投票(6)
A★5台風クラブ(1984/日)大人は子供達の不安と不満を混同する。彼らは、本当は不満など持たない。あるのは不安。だが、それを示すすべも持たない。なぜ、私達はそんな事も忘れてしまうのだろう。投票(11)
A★4魚影の群れ(1983/日)自分では気づかぬうちに人生の坂を下り始めた、剛腕漁師緒方拳が「得たもの」と「失ったもの」の決算に向き合わされる話である。ただし「その話」は物語を語るのではなく、すべて事象として提示され続ける。意地でも夏目雅子の顔を撮らない相米の心意気。投票(1)
A★4セーラー服と機関銃(1981/日)決して流麗ではなく、強引とも見える力づくの長まわし。寺の境内からバイクの疾走にいたるシーンの突進力は圧巻。相米慎二の粘着と田中陽造の居直りが、作品をアイドル映画に終わらせず薬師丸ひろ子の無垢が無遠慮に大人世界を侵食する。 投票(4)
A★4翔んだカップル(1980/日)相米監督の資質が自然に、従来のアイドル映画の文法を壊していく。もう少しコンパクトにまとまっていればいいんだけど。投票
A★3光る女(1987/日)純愛を人間の内へ内へと突き詰めていくと、人が人として持つ生きものとしての力へと行き着くのかもしれない。だから、仙作(武藤敬司)の持つ生きものとしての純度の高さだけが、都市という虚飾の中に埋没した芳乃(秋吉満ちる)を蘇生させ得るのだ。投票(1)
A★3雪の断章 情熱(1985/日)二人の男をもう少し描かないと、少女とのすれ違いや葛藤が全然見えてこない。投票(2)
A★2ションベン・ライダー(1983/日)頭に浮かんだやりたい事は、全てブチ込みました・・・でも、何にも出てきませんでした・・・という作品。好意的に見れば、後の『台風クラブ』へつながった、ということかなぁ〜投票(1)
B★4お引越し(1993/日)セーラー服と機関銃』の薬師丸ひろ子は赤いハイヒールを履いて「少女」に別れを告げた。レンコ(田畑智子)は、船を赤々と焼き尽くす送り火とともに家族を葬送し、「少女」という未来へ続く道程の入口に立つ。未熟者を慈しむ相米の視線はいつも温かい。投票(2)
B★4東京上空いらっしゃいませ(1990/日)「帰れない二人」をフューチャーした時点で世界観はほぼ完成。投げやりに怒鳴るような牧瀬の台詞まわし(機関銃の薬師丸もそうだった)が始めは耳障りなのだが、次第に相米ペースに乗せられて、ついにロングテイクで一気に見せる圧巻のダンスシーンで撃沈される。投票(4)
B★4あ、春(1998/日)男と女の死生に対する生理的な距離感。そのズレが一瞬かいま見えるのが“春”。図式的な構成や暗喩は、良くも悪くも中島丈博の脚本。投票(2)
B★3夏の庭 The Friends(1994/日)児童映画ということを過剰に意識してだろうか、いつもの「強引」が「流麗」にまで昇華するカメラワークが少なく相米色が薄い。定番の疾走や雨や花火や坂道や自転車も画面に与えるインパクトが弱く、ひと夏の死をめぐる物語は予定調和に行儀よく納まってしまった。投票(1)
C★4風花(2000/日)ボーダーを生きる女とトップから落ちてきた男。同じ“恥の人生”のようでいて、相手の傷を思いやるゆとりなどない。小泉今日子浅野忠信がその距離感を好演。相米慎二の“長まわし”も力が抜けていて心地よい。監督が演者を信頼しているのが分かる。投票(5)
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