Sigenoriyukiさんのコメント: 点数順
空の大怪獣 ラドン(1956/日) | 『ゴジラ』を遥かにしのぐ傑作。スタンダードサイズの画面の構図、フレーミングはほぼ完璧である。屋内の場面では常に画面内に窓が配置され空間に開放感と奥行きを与えるように設計されている。高低差のある場所を意識して選んだと思われるロケーションや炭鉱内の美術は最良の西部劇のように素晴らしい。 [review] | [投票(2)] | |
ゾンビ(1978/米=伊) | ゾンビ映画とは決して単なるホラー映画ではなくD・W・グリフィス直系の極めて真っ当なアクション映画なのである。 [review] | [投票(1)] | |
曽根崎心中(1978/日) | お初(梶芽衣子)は徳兵衛(宇崎竜童)以外の人間とほとんど目を合わせようとしない。目を合わせたとしても、それは必ず徳兵衛に関する会話が成される時だ。それ以外の場面では瞬きすらせずただ何もない空間を見つめている。このひたすら徳兵衛を求めてさまよう目線が梶芽衣子のキャラクターを特異なものにしている。 | [投票(5)] | |
日本で一番悪い奴ら(2016/日) | こんなに画面にタバコの煙が充満している日本映画はもう20年は作られていないんじゃないか。アップやカメラ揺れが多くともロングショットはしっかり決めている。130分という長さは適切とは思えず終盤はだれているが『凶悪』よりずっと良い。明らかに70年代東映実録路線を意識しているがそれでも綾野剛を凄みのある悪漢ではなくどこまでも情けなく滑稽なチンピラという身の丈にあった役を演じさせているのが良い。 [review] | [投票(4)] | |
バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(2016/米) | 目下のところザック・スナイダーの最高傑作だろう。撮影がラリー・フォンへと戻ったのは大成功だった。台詞が少ない、説明しない。人物は迷わずにただ行動し続ける――ヒーローというのは、目的がひとつしかない人物のことだ。そのただひとつの目的がなんであるか、その目的が邪悪であるか軽薄であるかポジティブであるかにかかわりなく、それがヒーローなんだ。(ジョン・カーペンター) [review] | [投票(4)] | |
ザ・ウォーク(2015/米) | まずはパントマイム他各種曲芸に綱渡りスタント、おまけに全裸ダンスまで見せてくれたジョセフ・ゴードン・レヴィットに敬意を表そう。綱渡りの話なんかどうやって映画にするのかと訝しんでいたが序盤のフランスパートは喜劇、アメリカパートは犯罪映画的とうまいこと映画の文体に落とし込めている。たとえ3Dで見なくとも奥行きのある構図は十二分に効果的である。 [review] | [投票(4)] | |
続・荒野の用心棒(1966/伊=スペイン) | ぬかるんだ町は『シェーン』からの影響という意見もあるが、泥濘の量から考えると『スポイラース』や『アラスカ魂』などのアラスカを舞台にした西部劇を参考にしたのではないか。北のアラスカと南のメキシコがこんなところで繋がるというのも何とも面白い。 [review] | [投票(4)] | |
スター・ウォーズ フォースの覚醒(2015/米) | シリーズ最高傑作だと思う。シリーズ故の制約かローレンス・カスダンの脚本のおかげなのか、同監督の『スター・トレック』とは違い、1カットが程よく長く奥行きがあり、煙が立ちこみ光がきらめく落ち着いた画面が作られている。136分という長さや回想シーンもあるため多少だれるところはあるものの、人物が行動し続けるため映画が停滞することはない。ことあるごとに被写体にカメラをぐっと寄せるのは好きになれないが。 [review] | [投票(3)] | |
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(2012/日) | 断然支持する。テレビの延長線上にあった以前のシリーズよりも立体的な構図やカメラワークが多用されており映画たろうとする意欲が感じられる。音楽と映像を見事に同期させたアクションシーンも『ファンタジア』の頃からの伝統に沿うアニメーションの正しい姿であると言って良い。ひたすら画面と音響を堪能するという点において前作よりもよほど優秀な娯楽映画である。 [review] | [投票(3)] | |
スパルタカス(1960/米) | この時期に作られたローマ史劇ものの中では本作が最高傑作だろう。これだけの大作を画面の隅々までコントロールしてみせたスタンリー・キューブリックの手腕は見事としか言い様がない。本人のプライドが許さなかったのだろうけれど、変に作家ぶったりせずにこういう大作専門の職人監督として活躍し続けてくれたなら映画史はもっと面白いものになっただろうに。 | [投票(3)] | |
寄生獣(2014/日) | あの心理的かつ説明的な原作からよくここまで映画として見られる脚本を作ったものだと感心する。一方で原作のドライさのおかげか山崎貴のいつもの感傷病も幾分か抑えられているのも良い傾向だ。阿藤正一の撮影も中島哲也作品の時のようなPV臭は感じさせず硬質な世界観を生み出すのに貢献している。音楽はやや大袈裟だが。 [review] | [投票(3)] | |
キャスト・アウェイ(2000/米) | この映画には本当にびっくりした。いわゆるロビンソン・クルーソーものがまともな映画になるはずがないと高を括っていたからだ。無人島に役者が一人いるだけでは映画の魅力の一つである会話劇や視線劇を成り立たせることができないため退屈で平凡な描写に留まると踏んでいたのに前述の問題点をあっさりと解決してしまっているのだから全く大したものだ。 [review] | [投票(2)] | |
青天の霹靂(2014/日) | これは単に芸人としてのネームバリューに頼っただけではない、極めて真面目に演出された映画だ。劇団ひとりにはこれからもコンスタントに映画を撮ってほしいと思う。 [review] | [投票(2)] | |
神々のふるさと・出雲神楽(2002/日) | 脱いだ靴、儀式そっちのけで酒を飲む人々、仮面を被る時の表情、あくびをする子ども、この映画には単に伝統行事を記録することが目的ならばノイズにしかならないはずの行事に関わる人々の様々な表情が映されている。伝統という「過去」だけではなく「今」を捉えようとしているからこそ、映画は生き生きとしているし、確かに面白くなるのだ。 | [投票(1)] | |
スキャナー 記憶のカケラをよむ男(2015/日) | 回想と泣かせのしつこさ、台詞が多分に説明的であるなどいくつか気に入らない点もある。しかしそれでも金子修介の職人的手腕がいかんなく発揮された彼にとって久々のメジャー映画にして秀作であることは確かだ。タイトルの円運動と音楽、消えた女への執着、殺人鬼の造形、ドリーズームなど随所でアルフレッド・ヒッチコックを連想させるがパロディの域は出ていないか。 [review] | [投票(1)] | |
進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド(2015/日) | オープニングは『フランケンシュタイン対地底怪獣』だろう。回想・フラッシュバックの多用もここまでくるといっそ清々しい。前篇でしくじっていたホラー的演出は鳴りを潜め、心地よい風が吹き抜け祝福の光が降り注ぐ感動的なチームの映画だ。スプラッタ―描写もこちらの方が爽快で良い。本来こんな映画を褒めてはいけないことぐらい重々承知だが個人的につぼにはまる場面の連続なのでどうしても嫌いになれない。 | [投票(1)] | |
ラブ&ピース(2015/日) | 園子温アンチこそ見るべき映画なのかもしれない。確かに相変わらずどうしようもなく下品な箇所もあるのだが過激な内容や演技に頼ってはいない、サイレント映画的処理まで見られる。西田敏行がいる下水道の空間などは割かしちゃんとした画面造形が成されており、日本映画的野暮ったさは感じさせずハリウッドライクな雰囲気である。良質な音楽映画であり、動物映画であり、クリスマス映画であり、そして怪獣映画である。 [review] | [投票(1)] | |
ヘイトフル・エイト(2015/米) | 2時間もの間続く1章〜4章の会話の数々は退屈に尽きる。これらの会話が退屈なのはそれが知的で論理的でもっともらしいがために人物の行動・暴力を抑制し続けているからである。この点は『ジャンゴ 繋がれざる者』にも見られた傾向をそのまま踏襲しており全く好きになれない。しかしそれだけに残りの5章&最終章は感動的だ。やはりクエンティン・タランティーノは文学や政治の人である前に紛れもない映画人なのだ。 [review] | [投票(1)] | |
一番美しく(1944/日) | 黒澤明という人は一般的には男性的な作家だと見做されているが、この映画や『乱』を見ていると女優を中心に据えた方がよっぽど良い映画を撮るんじゃないかと思えてくる。だからといって女性的な作家であるとは全く思わないが。恐らく男優の場合だと作家の言いたいことをそのまま代弁するような説教臭い人物・物語として描いてしまうことが一番の原因なのだろう。 | [投票(1)] | |
惑星大戦争 THE WAR IN SPACE(1977/日) | リボルバー式カタパルトは西部劇であり、轟天が敵のローマ船のオール状ビーム砲を叩き割る場面は明確に『シー・ホーク』冒頭のあの素晴らしいミニチュア海戦へのオマージュだ。的確な構図・編集、人物の出入りの処理のうまさ。福田純の職人的演出は全く衰えていない。少なくともかつての娯楽活劇の再現という点において『スター・ウォーズ』や『宇宙からのメッセージ』よりはるかに優れている。 | [投票(1)] |