[コメント] レザボア・ドッグス(1992/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
”ブロンド”(マイケル・マドセン)に殺されかけた人質の警官が、すんでのところで”オレンジ”(ティム・ロス)に助けられる。そこで初めて明らかにされる”オレンジ”の素性。そして彼と警官とのやり取り。
"I'm a cop." "I know."
……しかしその後登場するエディ(クリス・ペン)に、それまでの救出劇が何だったのかと思えるぐらいのあっけなさで、警官は撃ち殺されてしまう。構築されていたドラマをいともあっさりと放擲し、物語的な持続をいきなり断ち切ってしまうこの唐突で性急な暴力。これに先立つ耳削ぎ拷問シーンなんかよりもはるかに残忍で容赦なく、このヤクザ映画にも通じる潔さに俺は"cool"を見る。何度見てもゾクゾクする。
そしてこの「冷たさ」があればこそ、その後に続く、それぞれの心情や思惑が入り乱れあう4人による銃の突きつけ合いシーン、このクソ笑っちゃうくらいの「熱さ」が活きてくる。ファッキン冷酷なクセしてファッキン仲間思いで、しかもバカばっかで、なんてファッキンかっこいい奴らなんだ、と。あ、なんか一人例外がいるけど(ブシェーミ)。単に"cool"なだけじゃない。単に"hot"なだけじゃない。タランティーノ流「スタイリッシュ」の秘密は、この"cool"と"hot"の過激な温度差にあるのではと思う。
この"cool"と"hot"の過激な温度差をついには理解しえなかった数多のフォロワーたちが作り出す、表層をなぞっただけの「スタイリッシュ」映像のなんと退屈だったことか、それは10年経っても色褪せないこの映画が、いまだ「スタイリッシュ」のマスターピースであり続けているという事実が証明している。
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