[コメント] CASSHERN(2004/日)
事前に、ここや他のところで、ものすごく酷評されているのを知りつつも、プレビューがとても面白そうだったのと、麻生久美子という女優さんが好きだったので、「ま、ヒーローものなんだし。あんまり固いこと言わずに気楽に見れば楽しめるでしょ」と考えて観に言った。
だから、最初からあまり期待はしていなかったのだけれど、鑑賞してみて予想以上にがっかりさせられたと言わざるをえない。
もちろん、良い部分がなかったわけではない。
映像は、1つ1つのシーンを「切り離してみれば」とても奇麗だし、独特の世界像もよく描かかれていると思う。また、俳優たちの演技、特に唐沢寿明の熱演が印象的だった。彼は、以前、とんねるずの某番組にゲストと呼ばれた時、キャシャーンが大好きで、この映画の話が来た時に「どんな役でもいいからやらせて下さい」と言ったと冗談まじりに話していた。それだけ思い入れがあったのだろう。
また、紀里谷和明は、この映画を「人間はなぜ争うのか」という問いに対する答えとして撮ったという。このご時世にそういうことをまじめに映画の題材として扱って、答えようとするという意欲は素晴らしいし、そういう意味で「意欲作」ではあったと思う。
そうしたポジティブな面を踏まえても、尚、この映画には失望させられたと言わざるをえない。いくつもの理由が指摘できるが、そのうちのいくつかは、以下のものである。
第1に、「人間はなぜ争うのか」という問いに対する答えを描く映画であれば、キャシャーンであった必要は無い。これは別に「キャシャーンで描いたら駄目」ということは意味しないが、より重要なことは、「キャシャーンが観たくて映画館に来る人は、はたしてそんなものを観たいと思ってくるのだろうか」ということである。基本的に、「キャシャーンがやらねば誰がやる」という言葉につられてくる観客は、かつてのヒーローものへのノスタルジーと共に映画館にくるにではないだろうか。たとえば、「スパイダーマン」を観に行くアメリカ人が、スパイダーマンが反戦映画として描かれていたらどう思うだろうか?もっとも、この問題点は、映画としてよくできていればそれほど目立たなかったかもしれない。
第2に、その問いへの答えとして、いろいろと未消化なものを詰め込み過ぎである。戦争がもたらす非人間性、善悪の相対化、指導者の腐敗、軍需産業、人間の本性としての戦争、生命倫理など、重要なテーマに対する思想が、必ずしも作り手の側でよく練られないで、曖昧なものを曖昧なままに映画の中でも詰め込まれ、観客に疲労をもたらす。そういうテーマに奇麗で明確な答えが出て来るなんて誰も期待はしていないだろうが、ストーリーを通してある筋の通った思想や問題提起が見えないのは問題だと思う。
第3に、オリジナルから設定を変え過ぎだと思う。これはプレビューの時点で既にあきらかになっているが、キャシャーンはロボットではなく、いわばバイオテクノロジーから生まれた超人である。その他にいろいろと変わっている部分がある。僕はキャシャーンの世代ではないので、あまりこの作品に愛着はないが、それでも、作り手が描きたいものに無理矢理合わせる形でキャシャーンが書き換えられているという印象を受ける。これは原作を好きな人たちにとっては辛いのではないだろうか。
第4に、最も問題だと思われるのは、重要な台詞を充分な積み上げなしに役者に喋らせてしまうということである。「憎しみは憎しみを生むだけ」であるとか、「人はなぜ戦争をするのか」とかいった台詞というのは、ともすれば陳腐でおセンチな台詞になってしまう。それがそうとは受け取られないようにするためには、あえてそういう台詞を役者に喋らすのではなく、ストーリーの中で描くことによって観客に印象付けるか、あるいはそういう台詞が出てきても違和感がないくらい、その台詞の前までにちゃんと登場人物の心理描写やストーリーの中で積み上げることが必要だろう。それをなしに、入れ替わり立ち替わり役者にそうした台詞を喋らせている。観ている方としては、説教臭くて疲れてくるだけで、1つ1つの台詞に重みを感じ得ない。ストーリーの筋自体、支離滅裂なので、感情移入ができず、台詞に共感できない。
最後に、主役の印象が薄い。伊勢谷友介 という俳優さんの問題というよりは、映画の中での位置づけの問題だと思うが、主役の印象が薄いヒーローものとはいかにも。
かなり辛口に書いてしまったが、それもこれもこういう日本映画に対する僕の?圓??意識の中で高い?蕕海宗?8紊砲發辰抜?圓靴燭ぁ
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (13 人) | [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。